傾聴ボランティアが必要な人はまだいる【福島・いわき発】

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   午前10時の開店に合わせて、イトーヨーカドー平店2階の交流スペース「ぶらっと」へ行くことがある。7月30日には、いわき市内で震災・原発事故の被災者や避難者の支援活動を続けているNPOの合同情報紙「一歩一報(いっぽいっぽ)」(=写真)の編集会議が開かれた。少し遅れて参加した。


   5月までそれぞれ独自に発行していた情報紙を一つにまとめることになり、6月1日付で「一歩一報」の創刊号が出た。市内のNPOや個人などが結集した「3・11被災者を支援するいわき連絡会」(愛称:みんぷく=みんなが復興の主役)が発行主体だ。


   「ぶらっと」ではこの日、傾聴ボランティアが2人、利用者の話を聴くために待機していた。編集会議が終わったあと、茶飲み話に入って、なにげなくあたりを見回 したら、年配の女性が傾聴ボランティアの前で涙ぐみながら、しかしすっきりした表情で立ち上がり、礼を述べて歩き出すところだった。


   「ぶらっと」では健康運動、押し花、デッサンなどの教室やサークル、あるいは双葉町民の集い、楢葉町民の集いなどが日替わりで開かれている。そのなかで、長く定期的に続いているのが無料健康チェックと「傾聴の日」(火曜日)だ。


   東日本大震災から間もなく2年5カ月。震災前と同じ日常が戻りつつあるようにみえても、一人ひとりの心は傷ついたままだということを、年配の女性の涙が教えてくれる。希望が言われ、復興が語られても、心にぽっかりと穴があいたままの人が少なくない。


   そんなことを思いめぐらしながらトイレから帰ると、傾聴ボランティアの女性と目が合った。驚いた。旧知の人だった。「震災以来でしょうかね」と彼女。そうかもしれない。が、震災後、どこかの集まり(講演会かなにか)で会っているような気もする。「ぶらっと」があるからこその、思わぬ再会だった。


   「ぶらっと」を、「一歩一報」を必要とする人がいる。必要とする人のために自分の時間を割く人がいる。こうして人は出会い、つながり、一人ぼっちではないことを確かめる、のだろうか。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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