フェイスブックの「いいね!」の数やツイッターのフォロワー(登録読者)数の「水増し」が日本国内でも明らかになるなか、英国の民放が「『いいね!』製造工場」とも呼べる現場に潜入し、殺風景な作業関係で数人の労働者が黙々と「いいね!」を付け続ける様子を放送した。
この工場の経営者は、オンラインカジノのフェイスブックページにも「いいね!」を増やすサービスを提供していたことも明らかにした。利用者は「いいね!」の数を参考にして賭けに参加するかどうかを決めることも多く、番組は、「水増し」行為が消費者の判断をミスリードするとして批判している。
ユーチューブ再生回数は「1000回あたり…2ドルでお手伝いできる」
「工場」を取材したのは、英国の民放「チャンネル4」が2013年8月5日夕方(現地時間)に放送したドキュメンタリー番組「ディスパッチーズ」。記者がバングラディシュの首都、ダッカにある建物の薄暗い一室を訪れ、ラッセルと名乗る男性が出迎えた。
記者がユーチューブの再生回数を増やす方法について聞いたところ、ラッセル氏は、
「1000回あたり…2ドルでお手伝いできる」
と返答。「いいね!」を1000増やすには15ドルが必要だという。
「本当に人が見ているように見せたければ、時間がかかる。3~4時間」
実在のアカウントを使って、依頼者の指定があったページに黙々と「いいね!」を付け続けるようだ。
勤務は3交代制で、昼夜「いいね!」を製造し続ける。所属する作業員は15人程度で、ひとりあたりが1000アカウントずつ持っている。工場全体としては1万5000の「いいね!」を販売できる計算だ。作業環境はかなり殺風景で、机の上にはPC以外にはマグカップやペットボトルぐらいしか確認できない。
「いいね!」水増しは「消費者にとってミスリーディング」
「フェイスブックは、これを防ぐことはできないのか」
との記者の質問には、ラッセル氏は、
「できない」
と即答。かなりの自信を見せた。さらに、自らの顧客も暴露した。ラッセル氏は「いいね!」を有名なオンラインカジノのページにもつけたという。
このオンラインカジノは、有名なボードゲーム「モノポリー」をモチーフにした「モノポリー プラス」。米玩具大手のハズブロ社からライセンスを受けて運営している。「いいね!」の数の多さでカジノへの参加を決める人もいるようで、番組ではアナリストが、
「利用者が使用を決めるとき、31%の人が『いいね!』、再生回数、フォロワー数などの評価や閲覧数をチェックする」
と説明。法律の専門家は「いいね!」の水増しについて
「消費者にとってミスリーディングだ」
と批判した。
番組がハズブロ社に「いいね!」の水増し疑惑について問い合わせたところ、同社は指摘を受けるまでフェイスブックページの存在は把握していなかったといい、
「モノポリーを含むいかなるブランドの利用は、広告規範と法律にのっとったものでなければならない」
とコメント。ほどなくしてフェイスブックのページは削除された。
番組によると、このようなケースはまだまだ氷山の一角のようで、今度、同様の問題が続出しそうだ。