もう3カ月半前になる。夏井川渓谷の無量庵(わが埴生の宿)(=写真)へ行ったら、玄関のたたきに「事前調査報告」と題された1枚の紙が落ちていた。はがきや回覧物は戸のすきまから中にさしこまれる。それほど家は古く、戸はゆるい。
その紙の文面。「除染計画を作成するにあたり、除染を行う範囲の確認をさせて頂きました。/つきましては、目印となる点に、リボン及び杭を設置させて頂きました。ご不在の折、誠に恐縮ではございますが、ご理解、ご協力の程、何卒、宜しくお願い申し上げます。」
「調査実施者」として、小川地区の除染業務を委託された共同企業体の名前が記されており、不明な点はいわき市の原子力災害対策課か施工業者に連絡を――とあった。
人の文章を読むとすぐ「アカ」を入れたくなる。「頂きました」も、「及び」も、「程」も、「何卒、宜しく」も平仮名でいい。そう思いながら、目は「除染を行う範囲の確認」をしたことに釘づけになっている。
敷地内を巡ってリボンと杭を探した。それらしいものが隣地との境に立つヒノキの樹下にあった。後日、ほかのところでもリボン付きの杭を見つけた。「リボン及び杭」とはそれ、だろうか。
いわき市の除染実施計画によると、市内北部の川前、小川、久之浜・大久、三和、四倉、平地区はすべての大字が除染対象区域になっている。空間線量率を年間1ミリシーベルト(毎時0.23マイクロシーベルト)未満にするのが目的だ。
先日、市文化センターで集まりがあったついでに、市役所の原子力災害対策課に足を運んだ。2月12日に別の業者が調べたデータを出してもらった。敷地内8カ所の土・芝を、1センチ、50センチ、100センチの高さで測定した。100センチの線量をならすと0.23マイクロシーベルトをほんの少し超える。
自分でも無量庵の芝生とコケの庭を測って、0.2マイクロシーベルトを超えていることはわかっていた。いよいよきたか、という思いがわいた。
もっと山奥の川前や川内村、実家のある田村市で除染作業をしているのを見たことがある。無量庵でも庭の木々を剪定し、表土をはがして客土をすることになるのだろう。除去土壌は敷地に「仮・仮置き」されるのか。胸のなかで「怒」の字がまたまた大きく、強くなってきた。
(タカじい)
タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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