「ビールの売れ行きが振るわない」と、苦戦を強いられていると思われていたビール業界。ところが、アサヒグループホールディングスとキリンホールディングスの大手2社の2013年6月中間連結決算は、ともに増収増益となった。
好調の要因は海外事業。アサヒHD、キリンHDともに海外の酒類や飲料事業が2ケタ増と好調に推移した。経営の足を引っ張っているのは、どうやら国内のビール販売のようだ。
アジアや豪州で売れる「ジャパン」ブランド
アサヒHDが2013年8月1日に発表した13年6月中間連結決算によると、売上高は前年同期に比べて9.9%増の7807億円、営業利益は12.6%増の369億円となった。
2012年に子会社化したカルピスが連結対象となり、国内の飲料事業が30.8%増の2191億円と全体を押し上げたこともあるが、注目される海外事業は、豪州などオセアニアや中国での「アサヒブランド」飲料の販売強化が功を奏し、売上高が21.7%増の910億円と大きく拡大した。
これまでアサヒHDは、2009年に英キャドバリーグループが所有する豪州の飲料大手シュウェップス・オーストラリアを買収するなどしてきたが、ライバルのキリンHDと比べて、海外戦略の出遅れを指摘された。
ただ、最終利益は前年に発生した持分法適用会社の特別利益がなくなったことによる反動で、39.8%減の154億円に減少した。
一方、キリンHDは、売上高が5.2%増の1兆962億円、営業利益は5.6%増の604億円と堅調に推移した。豪州やブラジルの子会社の商品構成を見直したことや生産の効率化などの効果で、売上高が18.6%増の3472億円、営業利益が39.7%増の163億円と大幅に増えた。
同社はビール大手4社の中でも早くから海外展開に積極的。2012年の海外売上高比率も30%を超える。その中心は中国・アジア、オセアニアだが、11年8月にはブラジルのビール大手、スキンカリオールを買収。2006年からのM&A投資額は1兆円を超える、とされる。
そのスキンカリオールは、12年8月にバイア工場を拡張、同11月には「ブラジル・キリン」に社名変更した。ブラジルへの投資は不評で一時、株価を落としたが、それを払拭した。
13年6月中間決算では、シンガポールの飲料大手、フレイザー・アンド・ニーブの株式を売却したことで、最終利益は前年同期に比べて4.6倍増の596億円になった。
上半期の国内ビール出荷量は過去最低
じつは、韓国でも日本のビールがジワジワと売れているようだ。韓国の輸入ビール市場といえば、米国産の「Miller」とオランダの「Heineken」が代表とされるが、2012年には「アサヒ」(ロッテアサヒ酒類が販売)がそれらを抑えてトップに立った。
2013年の夏はサントリー酒類「ザ・プレミアム・モルツ」やアサヒビールの「スーパードライ」が人気という。
韓国関税庁によると、2013年1~6月のビール輸入額は前年同期比21%増の3951万ドル(約39億円)で、国別シェアで日本は33.5%を占めている。オランダ、ドイツと続いている。
とはいえ、アサヒHD、キリンHDともに悩みは国内のビール販売だ。
両社とサントリー酒類、サッポロビール、オリオンビールの5社がまとめた2013年1~6月期の国内ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンル)の課税出荷量は、前年同期比0.9%減の1億9929万ケース(1ケース大瓶20本換算)となり、統計を開始した1992年以来、上半期としては過去最低となった。
ビール系飲料全体に占めるビールの割合は48.2%、発泡酒が13.9%、新ジャンルは37.9%となっている。
6月単月の出荷量も前年同月比4.1%減と低調。梅雨明けが早まったことで7月前半は比較的好調に推移しているというが、これでは海外市場に頼らざるを得ないというのが本音だろう。