外食チェーンで広がる値上げ 「高級感」で客単価アップ狙う

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   集客力を高めるために値下げする――。外食産業のそんな「常識」が崩れつつある。マクドナルドの「100円マック」や「牛丼の値下げ戦争」に象徴される、デフレ経済のけん引役だった外食産業が、これまで積極的だった低価格路線を修正している。

   2013年6月には日本マクドナルドホールディングス(HD)が500円超の高級ハンバーガーを発売。値上げは寿司チェーン店やファミリーレストランなどで、じわじわと広がっている。

「マクドナルドが値上げしなければ、デフレは脱却できない」

   マクドナルドの「BITE クォーターパウンダー プロジェクト」で展開した新商品、「クォーターパウンダーBLT」は520円~570円。ハンバーガーの単品価格が500円を超すのは同社で初めてという、高級ハンバーガーだ。

   2013年7月には「1000円プレミアムバーガー」を発売。トリュフなど高級食材でつくった「クォーターパウンダー ジュエリー」シリーズとして、「ゴールドリング」、「ブラックダイヤモンド」、「ルビースパーク」の3種類を用意。それぞれ1日限定とはいえ、1個100円でハンバーガーを売っていた同社が、突然「超高級バーガー」を投入したのだから驚いた人も少なくなかっただろう。

   SMBC日興証券の債券ストラテジスト、岩下真理氏は、「エコノミストの中には『まずはマクドナルドが値上げしなければ、デフレは脱却できない』との意見がありました」と指摘。さらに500円超のハンバーガーの投入という、マクドナルドの決断は「衝撃的なニュース」だったとしている。

   岩下氏は、「マクドナルドの戦略には最先端を行く印象があるのと、1社が値上げすることで他社がやりやすくなることはあります」と話している。

   兆しはあった。日本マクドナルドは5月初めに低価格帯の「バリュー商品」を100円から120円に値上げしたことをきっかけに業績が好転。5月の客単価が3.7%と大幅に増え、既存店売上高では前年同月比0.5%増と14か月ぶりに増収となった。

   6月の既存店売上高も1.0%増、客単価は3.8%増だったことが、同社を「強気」にさせたようにもみえる。

消費意欲強く、「食べたいもの食べている」

   一方、ファミリーレストランでは、「ステーキ」が人気だ。「ロイヤルホスト」を展開するロイヤルホールディングス(HD)は売り上げを順調に伸ばしていて、客単価も上がっているもよう。

   吉野家ホールディングス(HD)は、子会社の「どん」が運営するステーキ店「フォルクス」の全店改装に乗り出している。2013年3~4月には7か店を改装。木目調の落ち着いた雰囲気の内装に切り替え、同時にメニューもコース料理(2980~3980円)を導入するなど、高価格帯メニューの充実で客単価を引き上げる。

   客単価の上昇と運営の効率化で、改装した店舗の営業利益率は6~8%から12%に改善。吉野家HDは「改装効果は上がっています」と話している。

   とはいえ、値上げの背景には円安の影響や穀物価格の上昇や高止まりがある。たとえば、コメにしても2012年から業務用に利用される輸入米の値上がりが続いている。小麦、大豆などの穀物価格は2年前に比べてトウモロコシや大豆は約2倍、小麦はじつに約3倍にまで高騰している。

   2013年7月にも小麦やパン、食用油にマヨネーズなどが値上がり。10月には牛乳も値上げも決まっている。外食各社が値上げせざるを得なかったともいえるのだ。

   前出のSMBC日興証券の岩下真理氏は、「外食に限らず食品の値上がりは、まだ(品目が)広がるし、続くでしょう。ただ、これまで消費者は悩まず安いものに飛びついていましたが、それはなくなりました。数字のうえで外食業をみても、都心部を中心に消費者が食べたいものを食べているようすがうかがえます」と話している。

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