ソニー、パナソニック、シャープ……赤字に苦しんでいた家電大手の2013年4~6月期決算が発表された。シャープは最終利益で赤字になったものの、営業利益では黒字を確保。ソニーとパナソニックは最終黒字を確保した。
ソニーでは長く業績の足を引っ張ってきたテレビ事業が円安によって黒字化。シャープもスマートフォンなどの液晶パネルが堅調な伸びを示した。
円安効果で「薄型テレビ」の収益が改善
ソニーが2013年8月1日発表した13年4~6月期の連結決算(米国会計基準)は、最終損益が34億円の黒字(前年同期は246億円の赤字)となった。売上高は前年同期比13%増の1兆7127億円、営業利益は5.8倍の363億円だった。
テレビやスマホが大健闘。テレビ事業は52億円の営業黒字(前年同期は66億円の赤字)に転換。営業黒字は3年ぶりのことだ。円安効果に加えて、高付加価値製品に注力したことで採算が改善した。
スマホ事業は他社の苦戦を尻目に、販売台数が前年同期比3割増と伸びたことで59億円の黒字(同281億円の赤字)を確保した。また株式相場の上昇などを背景に、金融事業も好調だった。
ただ、14年3月期の業績予想では営業利益などの見通しは変えなかったが、テレビの販売台数は従来の1600万台から1500万台へ引き下げ、厳しくみている。
決算会見で、加藤優最高財務責任者(CFO)は「足元でまずまずの結果を残したが、先行きは楽観していない」と語った。
また、パナソニックの連結決算は最終損益が前年同期に比べて8.4倍の1078億円の黒字と、大きく改善した。黒字転換は12年10~12月期以来2四半期ぶりで、4~6月期としては過去最高益となった。
好調の要因は、やはり円安。薄型テレビや電池事業の収益が改善した。同社の場合、人件費の削減や年金制度変更に伴い一時的に利益が生じた特殊要因も大きかった。
売上高は0.6%増の1兆8245億円、営業利益は66.3%増の642億円。記者会見した河井英明常務は、「経営環境は厳しい状況が続いており、円安の影響を除くと実質減収になる」と説明した。円安による営業利益の押し上げ効果は80億円という。
デジタル家電市場を調査しているBCNによると、急激な価格下落が続いていた薄型テレビは、12年3月を底値に価格が上昇。「大型化」を背景に、4万3100円だった平均単価は、13年6月には5万7500円と33.4%伸びた。
ただ、BCNは「需要によって価格が上昇しているわけではない。市場はまだまだ脆弱で、不況下の物価上昇、いわゆるスタグフレーションの恐れも出てきた。いかに需要を喚起しながら価格を上げていくかが当面の課題だ」と指摘している。
シャープ 液晶パネルに明るさも、「復調」まだ遠い?
一方、シャープの2013年4~6月期の連結決算は、最終損益が179億円の赤字(前年同期は1384億円の赤字)。売上高は前年同期比33%増の6079億円。営業損益は30億円の黒字(前年同期は941億円の赤字)となった。
薄型テレビやスマートフォン向け液晶パネルの販売などで営業損益は黒字転換したものの、営業外で計上した利払い費用などがかさみ最終損益は赤字を脱却できなかった。
円安で競争力がついた液晶パネルの売上高が前年同期比3割増。自然エネルギーの固定価格買い取り制度で、国内を中心に太陽電池の売上高が倍増した。
半面、海外生産が多い白物家電事業は円安がマイナスに響き、減益となった。
赤字が続くスマホ(携帯電話)事業の立て直しは、NTTドコモの「ツートップ戦略」の対象から外れたシャープやパナソニックにとって喫緊の課題だ。シャープは、スマホの通期の販売計画を引き下げた。パナソニックのスマホ事業も、この4~6月期の売上高は14%減、赤字幅も拡大した。両社とも事業の「撤退」は否定しているが、浮上のきっかけも見当たらない。
薄型テレビの復調が確かなものとはいえないだけに、スマホ事業の影響は小さくない。