交渉参加国は早期妥結へ意欲
しかし、交渉の先行きは決して楽ではない。鶴岡首席交渉官は「日本の立場を知らない人は1人もいない」と述べ、「重要5品目」の死守を狙う日本の方針は既に全交渉参加国に知れ渡っていると指摘した。だが、「聖域確保」に理解が得られているわけではない。逆に、議長国であるマレーシアのジャヤシリ首席交渉官が記者会見で繰り返し述べたように、「『包括的自由化』を定めた2011年のホノルル宣言に戻るべきだ」との主張が根強いのが実態だ。
一方、今回の交渉会合で、9月に予定されていた次回会合が8月に前倒しで開催されることが決まるなど、交渉参加国は早期妥結への意欲を強めている。交渉参加国は従来から「年内の妥結」を目指すと主張しており、交渉の加速を図るため、次回会合の冒頭には閣僚会合を開く検討も進められている。こうした中、「聖域確保」を目指すあまり、日本が交渉の進展を遅らせる挙に出る(と疑われる)ようなことは許されないのが実情だ。
短期間でいかに各国の出方を見極め、交渉のカードをうまく切ることができるか。慎重、かつ的確な交渉力がこの先数カ月、求められることになる。