百貨店の紳士服・洋品が好調だ。2013年6月の売上高はバブル経済崩壊後で最も高い伸びを示した。
これまでは高級時計や宝飾品など高額商品がけん引してきた百貨店の売り上げだが、「景気回復のサイン」ともいわれる紳士服・洋品の売上高が上向いてきたことで、百貨店は喜んでいる。
6月7.5%増 「トラッド・スタイル」が売れる
日本百貨店協会によると、夏物スーツを含む紳士服・洋品の売上高(既存店ベース)は2013年5月が前年同月比2.5%増の362億円、6月は7.5%増の372億円となった。プラスは2か月連続。5月がプラスになったのは1991年以来。6月は90年の15%以来の高い伸びとなった。
同協会は、「紳士服・洋品全体の売り上げは1991年1月に7.5%の伸びを示したことがありますが、それ以降、東日本大震災直後を除けば、バブル経済崩壊後で最も高い伸びになります」と話す。
そごう西武によると、西武池袋本店では5月のスーツの売上高が前年同月比15%、6月は22%といずれも大幅増えた。全店合計でも6月は6%増、7月も3%増で推移している。
ビジネスマンの服装のカジュアルになったうえ、クールビズの影響もあって、夏場のスーツ市場は長く冷え込んでいた。しかも景気低迷でスーツを買い控えていた人は少なくないが、「アベノミクス効果で消費者の気持ちに余裕ができて、買い替え需要が喚起されました。トラッド・スタイルの、『ニューヨーカー』や『ブルックスブラザーズ』『五大陸』(オンワード樫山)に『バーバリー ブラックレーベル』などが売れています」と話す。
西武池袋本店では、売れ筋の価格帯が例年5万円台のところ、今夏は6万~7万円にワンランク上がった。「奥さんから『新調してもよい』といわれてつくりに来た、というお客様もいました」という。
そごう西武では、プロパー(正価)商品の販売も積極的に展開しようと、今夏は例年の1.6倍を品揃えしたが、これが奏功。婦人服のワンピースやブラウスでも、例年より2000円前後高めの商品が売れているという。
「余裕のある人が増えてきたことは確か」
三越伊勢丹ホールディングス(HD)の、伊勢丹新宿本店のスーツの売上高も2013年7月中旬までの累計で前年実績を20%超上回っている。
ただ、三越伊勢丹HDは「余裕のある人が増えてきたことは確かですが、それでもまだ店舗によって売れ行きにバラツキがみられます」と話す。伊勢丹新宿本店は、東京メトロ副都心線の開通効果などもあって来店客数が大幅に向上。「紳士服も婦人服も(売り上げは)堅調ですが、それが消費マインドの改善と言いきるには尚早といえます」と、慎重な姿勢を崩さない。
前出のそごう西武も、「いいモノを買いたいという人は増えていますが、買っても財布の紐を締め直す人が少なくないです。消費行動が2極化している感じがあります」と指摘する。
そうした中で、三越伊勢丹HDの13年4~6月期の連結営業利益が、前年同期比4割強増えて100億円前後になったとみられる、と日本経済新聞(7月30日付)が報じた。
4~6月期としては過去最高となる。
消費の好調を追い風にブランド品など高額商品が伸び、婦人服や紳士服の販売も上向いた。13年4~9月期(上期)の従来予想(90億円)をすでに上回っている。
日本百貨店協会は、「(百貨店へのヒアリングでも)消費マインドの改善を実感できるようになった、という声を聞くようになりました」と、強気だ。