モノ言う株主「サード・ポイント」ってなんだ ソニーにエンタメ部門切り離し求める

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   ソニーの経営をめぐり、アクティビティファンド(モノ言う株主)と呼ばれる、米ヘッジファンドの「サード・ポイント」が注目されている。

   同社は米ウォール街でも一目置かれているヘッジファンド。上場企業に投資して、その経営者に経営改革を提案しては企業価値を高め、株式を売却して儲けるファンドだ。

エレクトロニクス事業は赤字から抜け出せないでいる

   ソニーの2013年3月期連結決算は最終損益が5年ぶりの黒字。営業利益は2301億円で、前期の673億円の赤字から回復したとはいえ、米ニューヨーク・マンハッタンの本社ビルや建てたばかりのソニーシティ大崎ビルの売却益や、「So‐net」のソネットエンタテイメントを完全子会社化した後、同社が保有していたDeNA株を売却するなどで得た利益で、どうにか黒字を確保した。

   営業利益を事業分野別にみると、もっとも利益を生んだのが金融事業で1458億円。続いてが映画事業の478億円、音楽事業が372億円で、これらの事業がほとんどの利益を生み出している。

   一方、ホームエンタテインメント&サウンド事業は972億円の赤字。薄型テレビなどのホームエンタテインメント&サウンド事業も840億円の赤字。デジタルカメラやゲーム事業も赤字ではないが、すごく儲かっているわけではない。

   エレクトロニクス事業は赤字から抜け出せておらず、いまのソニーを支えているのは金融と、映画や音楽というわけだ。

   そんな経営状況のソニーへの投資を増やしたのが、サード・ポイント。同社は2013年6月18日、ソニーの平井一夫社長宛てに、ダニエル・S・ローブ最高経営責任者(CEO)の名前で書簡を出したと発表。その中で、ソニー株の保有数を「7000万株に増やした」と公表した。7000株は発行済み株式の6.9%に相当する、ソニーの大株主だ。

   加えて、ソニーエンタテインメント株の米国での株式公開(IPO)を、改めて提案した。

   これに対して、ソニーは6月20日の株主総会で、平井社長が「今後の取締役会で適切に検討する」との方針を示した。「(エンタメ部門は)今後もソニーの成長戦略を実現していくうえで大変重要な事業」と話し、当面は金融事業も含めてエレクトロニクス事業との「一体運営が必要」と強調した。

米国は「どんぶり勘定」が許せない?

   サード・ポイントを率いる投資家のダニエル・S・ローブ氏は、2012年3月にヤフー株を約5.8%保有し、自身を含む4人の取締役候補の選任を要求したが、ヤフーがこれを拒否。対立した当時のスコット・トンプソンCEOの学歴詐称を暴いて辞任に追い込んだことで、日本でも知れるところとなった。

   そんなローブ氏が、いわばソニーに狙いをつけたというわけだ。

   ソニーは低迷する本業のエレクトロニクス事業を、金融とエンターテイメント事業で懸命に支えているのが現状。そこからエンタメを切り離したら、再び赤字に戻ってしまう。

   じつはソニーでもエンタメ事業の分社化を検討したことがあって、そのときは「相乗効果がなくなる」と見送った経緯がある。サード・ポイントはその考え方が「違う」というのだ。

   また、同社の提案によると、エレクトロニクス事業もエンタメ事業も平井社長がトップに就くことを提案していて、「シナジー効果は保てる」という。

   国際金融アナリストの小田切尚登氏は、「エンタメ事業を、米ディズニーやタイムワーナーと比べると、ソニーは明らかに(収益力が)落ちます。サード・ポイントにすれば、IPOによって責任を明確化し、インセンティブを働かせて経営改善を進めようというのでしょう。日本では稼ぎ頭を分社化すると、不採算部門のリストラは不可避と考えます。古くから『総合的』とか、『どんぶり勘定』の考え方が根強いですが、米国ではそのような考え方を許しません」と、話している。

   2013年7月23日には、サード・ポイントがヤフー株を売却してソニー株を買い増すとの観測が広がり、ソニー株が一時2300円台を回復する場面(終値は前日比76円高の2295円)があった。

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