偽札が銀行のATM(現金自動預払機)から出てきた――。日本ではありえないことだが、中国ではそれが現実に起こるらしい。
中国ではこれまでも、広東省などで偽人民元の製造工場が摘発されるなど、実際に偽札づくりが行われ、また偽札が出回っている可能性があることが伝えられているが、銀行のATMから引き出されたお金までもが偽札とは驚きだ。
買い物時や両替時に紛れたら、わからない
中国に頻繁に出張する、ある商社マンは、現地の銀行ATMから偽札が出てくることについて、「地方都市では、たまにあること」と、あまり驚く様子もない。というのも、同氏も1度だけ、偽札をつかまされたことがあったためだ。
しかし、「偽札とわかっても、みんな意に介さず、そのまま使っている」らしい。偽札とわかって、警察や銀行に届けてもその分の保証もなく、自分が損するだけなので、知らん顔しているというわけだ。
チェックポイントはいくつかあって、たとえば毛沢東の肖像の襟が凸凹になっていればホンモノ、白い紙を当てて赤い文字が映ればホンモノ、というもの。「透かし」の有無もある。
ただ、最近は肉眼では見分けがつかないほど精巧につくられているともいう。
産経新聞(2013年7月24日付)によると、中国では100元札(約1600円)などの偽札が出回っていて、偽札防止のため、たいていの飲食店は偽札鑑別機を常備しているほど、という。
ある日本人留学生は、大手銀行のATMで3000元を引き出したところ、そのうち700元(100元札7枚)が偽札だった。タクシー代を払うとき、運転手の指摘で気づき、銀行に訴え出たが、「ATMの中に偽札などあるわけない」と相手にされず、泣き寝入りしたとされる。
前出の商社マンは、「ふだんの買い物でも、常に確認しているわけではないから(偽札であっても)わからない」と話し、なかでも日本人が気をつけなければいけないのが、両替所と教えてくれた。とくに地方都市の両替所は、偽札鑑別機にかけるようなこともなく、お札の枚数を確認するだけなので、「紛れていても、まったくわからない」と指摘する。
日本銀行によれば、「国内のATMから偽札(日本円)が発見された事実はありません」と話す。
そもそも、銀行が現金を装填した時点で偽札が混ざっていることはないし、偽札を入金しようとしても、1枚1枚すぐに判別し、ATMが吐き出す(受け取らない)仕組みになっている。
あるATMメーカーの説明では、ATMには鑑別装置が取り付けられており、入金される紙幣を、厚さや「透かし」、「しるし」などで真券かどうか確かめるという。