今夏、霞が関の各省庁の事務方トップが続々と交代するなか、金融庁の畑中龍太郎長官が続投し3年目に入ったことは、金融界にサプライズだった。特に地銀業界には「畑中氏の持論でもある地銀再編が本格的に持ち上がるのではないか」との観測も浮上。関係者が情報収集に走るなど、戦々恐々となっている。
財務省次官は3年後輩
畑中長官が東大法学部を卒業して大蔵省(現財務省)に入省したのは、昭和51(1976)年。人事にあたっては入省年次が勘案されるのが霞が関の通例だが、出身母体の財務省では今夏の幹部人事で、53年入省組の真砂靖次官が退任し、後任に54年入省組の木下康司主計局長が昇格した。畑中氏が長官就任当初の財務次官は50年入省の勝栄二郎氏で財務省が1年上だったが、両省庁事務方トップの年次差は逆転、しかも差は3年に拡大した。
畑中氏と大蔵省に同期入省の松元崇氏も今夏、内閣府次官を留任しているため、金融庁長官だけが突出して年次が上になっているわけではないが、金融界では「そこまでして畑中氏が続投するからには、政府にも何かをやり遂げさせる意図があるのではないか」との憶測も広がっている。やり遂げる「何か」については二つの説が囁かれる。
一つは、畑中長官時代に実現した、東証と大証の経営統合による「日本取引所グループ」(JPX)をさらに発展させて「総合取引所」にすること。端的に言えば金や原油、穀物などの商品先物取引を担う東京商品取引所をJPXに合流させることだ。JPX内でも金融派生商品(デリバティブ)を扱う旧大証部門は歓迎だが、人員受け入れなどに慎重な旧東証部門、天下り先を失う経済産業省は消極的とされる。
商品先物市場は勧誘規制強化などで縮小が続き、取引所の統廃合も進んだ。今や「1強」の東商取といえども自前の取引システムを抱えて持続可能な運営ができるか不安の声もある。2013年3月期に最終黒字に転換したと言っても黒字額は2000万円に過ぎない。市場を安定的に継続させるため、総合取引所化が推し進められても不思議はない。