安倍政権が自衛隊に、いわゆる「海兵隊」機能を持たせようとしていることをめぐり、中国メディアが神経を尖らせている。
「日本が目指す海兵隊機能強化 標的は中国だけではない!」
「日中の緊張激化も」
「海兵隊」構想が本格化して以来、中国メディアではこうした見出しが相次ぎ飛び交う。そこには、中国側の警戒心がはっきりにじむ。
安倍首相・石破幹事長が推進、「防衛大綱」にも
主に上陸戦を専門とし、攻撃的な性格の強い海兵隊的な戦力は、「専守防衛」を掲げる自衛隊では一部の例外を除きこれまで本格的には整備されてこなかった。しかし、近年では離島防衛などの観点から、主に自民党内から海兵隊創設の声が高まりつつある。
安倍晋三首相もその一人だ。2013年5月8日、参院予算委で防衛問題について質問された際には、
「いわゆる島嶼防衛について言えば、海兵隊的な機能を我が国が備えていく必要性についてやはり議論していかなければならないと、このように思います」
と述べている。石破茂幹事長も以前からたびたび海兵隊創設論をぶっており、小野寺五典防衛相も6月15日の講演で、海兵隊的な水陸両用部隊の整備を訴えた。
防衛省が現在策定を進めている新防衛大綱でも、こうした政権の意向を受け、「海兵隊」的機能を自衛隊に持たせる方向で検討が進められている。7月25日、その中間報告の全体像が明らかになったが、そこでは「機動展開能力や水陸両用機能(海兵隊的機能)を確保することが重要」として、そのために必要な装備・人員などの強化が盛り込まれた。
万が一には尖閣「奪還作戦」に?
海兵隊構想の念頭にあるのは、緊張が続く尖閣諸島周辺での有事だ。防衛省の2013年版防衛白書では具体名こそ挙げていないが、「(他国の侵攻に対し)状況に応じ、島嶼の奪還を行うことも必要になる」と、新設される「海兵隊」が、万が一の場合には尖閣などの「奪還作戦」に従事する可能性を記す。
それだけに、中国は敏感に反応している。中国の国営通信社・中新社は15日、防衛大綱に「海兵隊」構想が盛り込まれる見込みだと報じ、「中国側の強い反対を招き、かえって緊張を高めることになりかねない」と警告する。対日強硬論で知られる環球時報も9日、
「日本が『海兵隊』を創設、釣魚島(尖閣諸島)『奪島作戦』を執行するかもしれない」
と見出しを打った。ニュースサイト「財訊」はさらにどぎつく、こんな見解を掲載する。
「『海兵隊』構想は単に中国に向けられたものではなく、第2次大戦後の世界秩序を破壊し、軍国主義を復活させようという危険な伏線だ」(17日)
こうした「海兵隊」構想を盛り込む新防衛大綱は26日の中間発表を経て、年末までに最終的にまとめられる予定だ。