「敗軍の将」細野豪志・民主党幹事長の辞意表明――そんな「おいしいニュース」を、テレビ局・新聞はまんまと取り損ねた。細野幹事長が2013年7月22日夜、どこよりも先にツイッターで辞表の提出を明らかにしてしまったからだ。新聞などは「ツイッターで明らかにした」と書くほかなかった。
これに限らず、最近は政治家たちがマスコミなどを飛び越えて、ツイッターやフェイスブックなどで重要な発言をすることが多い。
安倍首相「勝利宣言」も民放よりFBが早い
「今、NHKが私の当選確実を打ちました。応援頂いた皆様ありがとうございました!」
「皆さんのおかげで、当確いただきました。ほんまにありがとう!」
「多くの有権者の皆さまにご支持をいただいて参議院選挙の勝利を得ることができました。本当にありがとうございます」
21日夜、参院選の開票が始まるや否や、ツイッターやフェイスブックでは当確を決めた候補者たちが、続々と喜びの声を上げた。
かつてなら、こうしたコメントはテレビの中継がやってくるか、翌日の新聞に載るまで表には出ないものだった。しかし今や、「当確」が打たれるのとほぼ同タイミングで、政治家たちは自ら情報を発信できるように。
安倍晋三首相も午後9時47分、フェイスブックで、
「参議院選挙、17日間を通じて、国民の皆様の大きな期待を肌で感じました。『この道をブレずに進んで行け』との皆様の声をしっかりと受け止め、我々に課せられた責任をしっかりと果たしていけるよう、これからも全力で前に進んでいきます」
と「勝利宣言」を出したが、これはテレビでの開票後第一声(NHK、9時45分)とほぼ同着だった。
国民よりフォロワー優先でいいのか
かつてはソーシャルメディアを活用する政治家は珍しかったが、最近では「ネット選挙運動解禁」の流れもあり、安倍首相や橋下徹・大阪市長、猪瀬直樹・東京都知事など、自らの意見表明の場としてマスコミ対応以上に充実した情報を流す向きも少なくなく、メディアがそれを後追いするパターンが増えてきた。自民党きってのIT通として知られる平将明衆院議員は3月のJ-CASTニュースのインタビューで、
「今は、当事者の政治家がツイッターなんかで直接発言しちゃって、記者より早い。(中略)読者も記事を読むより、ツイッターでキーパーソン抑えておけばいいってことになる。マスコミはこれまでは他社との戦いだったのが、全然違うライバルが出てきた」
と評していたが、細野幹事長の「ツイッター辞意」も、まさに「記者より早い」の実例と言えようか。
こうした「ネット第一主義」は、政治家による情報の直接発信であり、ナマの声が聞けるとして期待する声が強い。一方で、ITジャーナリストの井上トシユキさんはこうも指摘する。
「今回のように野党の話ならともかく、たとえば政府や自治体などについての話が『ツイッターが最初』になってくると、ちょっと困りますよね。国民全体に広く発表すべき話を、フォロワー=支持者にまず伝えるということになりますから。芸能人がブログで出産報告をするのと同じようなノリでつぶやかれると、違和感がある人もいるのでは」