ニホンウナギ(稚魚)の減少が止まらず、世界的に「絶滅危惧種」に指定されるかもしれない。
2013年3月に開かれた、希少な動植物の輸出入を制限するワシントン条約締約国会議ではニホンウナギが規制の対象になることが見送られたが、次回の会議が開かれる3年後の2016年春には規制される可能性が高まっているという。
ニホンウナギ、絶滅危惧種に指定か?
水産庁によると、シラスウナギ(稚魚)の今季(2012年12月~13年4月)の漁獲量はわずか5.2トンと過去最低となり、中国などからの輸入7.4トンを加えても、2013年のシラスウナギの池入れ量(養殖池に入れられた量)は前年に比べて21%減の12.6トンにとどまった。
養殖業者が仕入れるシラスウナギの1キロあたりの価格は、12年が215万円で、前年の2.5倍に急騰。13年は260万~270万円とさらに高値になっている。
一方、財務省の貿易統計によると、中国や台湾から輸入されたウナギ(加工を含む)は、2012年が1万9661トン。前年に比べて、42.3%も減った。
中国や台湾の生産量が減っている背景も、原料であるシラスウナギの漁獲量の減少があるとみられ、ニホンウナギは分布している東アジア全域で減少傾向にあると考えていいようだ。
こうした背景から、ニホンウナギを世界的な絶滅危惧種に指定しようという動きが高まりつつある。絶滅の危機にある動植物の保護を目的にレッドリストをつくることで知られる、世界的な自然保護団体IUCN(国際自然保護連合)は、2013年7月1日からニホンウナギを含めた19種と亜種のウナギについて生息状況を評価し、絶滅の恐れがあるかどうかを検討する作業を開始。13年秋をめどに評価をまとめ、公表する方針だ。
IUCNのレッドリストは、各国政府に保護の必要性を訴えるもので、法的な拘束力はないが、ワシントン条約に強い影響力を持っているとされる。
水産庁は、「IUCNの指定は、そのままワシントン条約に直結するものではありませんが、レッドリストに載れば、不利に働くことになるでしょう」と話している。
国内でも「レッドリスト」では、「反論しづらい」
ニホンウナギについて、2013年3月に開かれたワシントン条約締約国会議では、議題にのらなかった。ただ、「米国内では会議の直前にウナギの規制が議題にのりましたし、欧州ウナギについてはすでに(ワシントン条約の)規制の対象になっています。次回、議題に乗れば、欧州などの議決権をもつ国が『保護指定』に回る可能性が高まりそうなので、議題にのるようなことになると、かなり厳しい状況になります」(水産庁)という。
加えて、国内でも環境省が2013年2月1日に、ニホンウナギを絶滅危惧種のリスト(レッドリスト)に指定した。「過去10年間あるいは3世代のどちらか長い期間において、少なくとも50%以上は成熟個体が減少していると推定される」との基準(絶滅危惧種IB類)にあたり、ニホンウナギはアマミノクロウサギやライチョウ、イヌワシなどと同じランクに位置付けられている。
シラスウナギも激減しているが、天然ウナギである親ウナギも、45年前から90%近く減っていることから指定されたのだが、水産庁は「国内でレッドリスト入りしては、さすがに反論しづらいですね」と漏らす。
もちろん、ワシントン条約で絶滅危惧種に指定されれば、ニホンウナギ(稚魚)の輸入は禁止されるので、国内に約400ある養殖業者は軒並み廃業せざるを得なくなる。ウナギ店も大ピンチだ。
日本養鰻漁業協同組合は、国の補助を受けながら、30年前からウナギの放流事業を行っている。「ワシントン条約については、なんとも言えません。ただ、ウナギ資源を保護し増やす努力をしてきましたし、続けていかなければならないと考えています」と話している。