政府税調、「非力」メンバーでスタート 多国籍企業の「租税回避」が当面のテーマ

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政治力は未知数

   しかし、新たな政府税調については、党税調に対して「非力」(財務省OB)との指摘もある。かつての政府税調は、故小倉武一会長(1974~1990年)、故加藤寛会長(1990~2000年)のように強烈な個性で政治とも渡り合い、あるいは政治と二人三脚で、消費税導入(1988年)、地価税創設(1991年)、消費増税(1997年)などの難題を処理。同時に、税法のサジ加減ひとつで個別の業界を潤すことができる100種類以上もの租税特別措置(租特)という最大の政治利権をめぐり、政府税調が党税調と一定の緊張関係を持って牽制する場面もあった。これも、「大物会長」の政治力あればこそという側面は否定できない。

   新会長の中里氏は政府税調の専門家委員を長く務めたとはいえ、50代という若さもあって知名度は高くなく、政治力は未知数。初会合後の会見で、政府税調からの発信について「与党税調で議論が展開されるので、必要に応じてできることがあればやっていく」と述べるにとどめ、慎重な姿勢に終始した。今回の起用について政界などでは「国際課税に詳しく、多国籍企業による国際的な租税回避が注目を集めていることが決め手になった」との解説が聞かれる。「高支持率を背景に、首相自身のリーダーシップで物事を決めていきたい安倍さんは、自身の流儀にかなう実務家を選んだ」(与党筋)というわけだ。

   安倍政権は今秋、来年4月に予定通り消費税率を8%に引き上げるか否かの判断をするが、「中長期」の視点では、消費税を含め財政再建に向けた税制の将来像をどう描くかという大きな課題がある。政府税調が政治任せでない専門家らしい議論をできるか、注視する必要がある。

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