参院選の4選挙区で予定されていた時事通信社主催のネット討論会が、当日になって突如中止になった。自民党側が司会者に難色を示して断ったとの情報が出ているが、自民党本部は事実無根だと主張している。
ネット選挙の解禁を受け、参院選候補者の討論会は、ネットユーザーの質問を受け付けながら、ユーストリームで生中継する予定だった。
自民党側が司会者の人選に難色を示した?
2013年7月11日に三重県、13日に愛媛県、14日に滋賀県、15日に岩手県と、開催予定もすでに周知されていた。ところが、初日になって、時事通信社が中止を決める事態になり、サイト上の告知や記事では、候補者出席の調整がつかなかったと説明された。
また、三重、愛媛、岩手3県の司会をする予定だったジャーナリストの下村健一さんも、急きょ中止になったことをツイッターで明かした。そして、滋賀県の司会に決まっていた元NHKアナウンサーの堀潤さんは、こんなツイートをしたのだ。
「主催者側からの説明によると、今夜司会の下村健一氏が菅内閣で内閣審議官をつとめており不公平だと、自民党が参加を当日になってキャンセルしたためだという。非常に残念だ」
下村さんもこのツイートを紹介し、「真相は不明です」としながらも、主催者から登壇できない候補者が増えたと聞いたとした。そして、いくつかの新聞も、ある選挙区の自民党候補者側の話として、司会者の人選に問題があるため参加を断るよう党本部から指示があったと報じた。
参加予定だった他党などの候補者からは、中止を疑問視する声が出ている。
三重から出馬した民主党の高橋千秋候補は、ホームページ上に岡田克也選対本部長名のコメントを出した。そこでは、ある政党が討論会にクレームをつけて候補者が参加を辞退したためだと聞いているとして、「十分な説明すらなく、突如一方的にネット討論会を中止した」と時事通信社に抗議している。
主催の時事通信社「こちらの準備不足」
また、民主党を離党後に無所属で岩手から出馬した平野達男候補は、時事通信社に対し、中止した理由を明らかにし、その経緯をホームページに載せるよう求めたことをフェイスブックで明らかにした。
実際、自民党が司会者の人選に難色を示して参加辞退を指示したというのは本当なのか。
4選挙区の候補者事務所に取材すると、滋賀の二之湯武史候補側は、党本部から2013年7月11日昼過ぎに、人選の問題から参加を考え直すよう指示があり、時事通信社に辞退することを伝えたことを明らかにした。その結果、時事側が党本部に中止させてほしいと連絡したそうだ。
一方、三重の吉川有美、愛媛の井原巧、岩手の田中真一の3候補側は、時事側が中止と言ってきただけで、それがなければ、ネット討論会には参加するつもりだったと取材に答えた。
自民党本部の報道局では、取材に対し、参加辞退の指示を出したことについて「その事実はないです」と全面的に否定した。
「うちは、ネット討論会を歓迎しており、候補者4人とも出るつもりだったと聞いています。時事通信社から11日の13時に連絡があり、準備不足などから自主的に中止したとしか聞いていません。各方面に聞きましたが、圧力をかけたり、辞めろと言ったりしたことはないとのことでした」
時事通信社の社長室では、「こちらの準備不足で、候補者をそろえられず、討論会の形式を満たせなくなって、やむなく中止したということです」とサイトなどと同様な説明を繰り返した。自民党側が司会者に難色を示したかについては、「関知している話ではありません」と答えた。人選に問題がなかったのかについては、「申す立場ではないです」と言っている。