野球評論家の張本勲氏が米大リーグ、テキサス・レンジャースのダルビッシュ有投手に苦言を呈した。発端は自身のテレビ番組での発言。これにダルビッシュ投手がツイッターで「反撃」したのだが、どうもそのやり方が気に入らないようだ。
「週刊文春」の取材に張本氏は、ダルビッシュ投手が言いたいことがあるのなら「私の目の前で言いなさい」と主張した。
五輪やWBCの「戦友」、ツイッターにたびたび登場
「場外バトル」は、張本氏がトロント・ブルージェイズでプレーする川崎宗則選手に対する厳しいコメントが開始のゴングとなった。レギュラー出演する「サンデーモーニング」(TBS系)で2013年6月23日、川崎選手を「野球選手として見られてないんじゃないの」「(打率)2割2分くらいだったら野球選手じゃないよ」と手厳しく批評したのだ。
番組を見たひとりが、この発言をツイッターでダルビッシュ投手に「どう思いますか」と尋ねた。すると「いやかなりチームに必要とされてますよ!」と擁護する。続けて、「あのコーナーは何のためにあるのかな? けなすため? わからん」。これに別のファンが「年寄りが自分たちは凄かったって自慢するためのコーナーだと思います」と返したところ、「メジャーのOBでそういう人たちいないなぁ」とこたえていた。
ダルビッシュ投手は川崎選手との親交が深い。日本のプロ野球では所属球団が違ったが、2008年の北京五輪や2009年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本代表チームの戦友だった。最近も、対戦のあった6月にはしばしば一緒に行動していたようだ。ツイッターを見ると6月8日付で、「変な人いた」と川崎選手が球場でバットを構える姿を公開。同じ日に「怪しい人いる」と街中で奇妙なポーズをとる写真を撮っている。翌日にはグラス片手に少々赤ら顔の川崎選手をなぜか「ご飯食べてたら知らない人に声かけられた」と紹介していた。気の置けない仲間といった様子が伝わってくる。
確かに「2割2分」という打率は、数字だけ見れば物足りないだろう。だが、それでもスタメンで起用され続けたのも事実だ。正遊撃手が復帰していったんマイナー降格したものの、別の内野手がけがをするとわずか2日でメジャーに戻ってきたことからも、チームにとって貴重な戦力なのは明らかだ。
オールスター出場決定を喜んでいた
孫ほど年齢の離れたダルビッシュ投手にチクリとやられた張本氏に、7月18日号の「週刊文春」が突撃した。ツイッター上で投げかけられた「あのコーナーは何のためにあるのかな? けなすため?」との疑問には「いいことはいい、悪いことは悪いとはっきり言うコーナー」と趣旨を説明。さらに「若者は書きたいものを書いて言いたいことを言いなさい」と物分かりのよさを見せた。ただし、こう条件をつけた。
「男なら日本に帰ってきて私の前で言いなさいよ。暗闇から石を投げるようなことをしてはいけません」
面と向かって食ってかかるなら「あっぱれ」、自分の知らないところで批判するのは「喝」というわけか。しかもふたりは、同じ球団の先輩、後輩にあたる。張本氏は、北海道日本ハムファイターズの前身となる東映フライヤーズに1959年に入団し、75年まで所属している。先輩に直接文句を言わないことこそ「無礼千万」というのだ。
ただ張本氏は、ダルビッシュ投手を嫌っているわけではない。7月7日の「サンデーモーニング」では、ダルビッシュ投手のオールスター出場決定と伝えられた(その後15日間の故障者リスト入りしたため、欠場が確定的)。すると「よかった。日本人が出ないと(球宴を)見る気がしない」と笑っていた。一方ダルビッシュ投手は、その後ツイッター上で張本氏に関する言及はしていない。
川崎選手への発言について張本氏は、激励の意味だったと明かし、むしろ「早く日本に帰ってきて」と話していた。日本のプロ野球を盛り上げてほしいとの希望だろう。ただ本人は7月10日の試合で9回に決勝打を放ち、勝利に貢献した。「喝」に奮起しての活躍だったかもしれない。ダルビッシュ投手の「かなりチームに必要とされてますよ!」という主張が正しいことを証明した格好だ。