参院選の選挙戦が中盤を迎えるなか、民主党の菅直人元首相が意気軒昂だ。民主党から公認を取り消された候補の支援に回ることを早々に表明し、執行部からは「黙っていてほしい」とお荷物扱いされても街頭演説に立った。ブログでは、原発事故の対応に関する安倍晋三首相からの批判に反発。安倍首相に対して「名誉毀損を正す他の手段」を検討すると息巻いており、「独自の戦い」の様相だ。
脱原発「筋金入り」大河原候補の支援を早々に表明
当初、菅氏は民主党の執行部を応援するつもりだったようだ。ブログには、細野豪志幹事長の著書「民主党は必要か」(角川書店)を読んだ感想として、
「彼らをサポートするのが私の役目だ」 とつづっていた。参院選公示前の2013年6月26日のことだ。
ところが公示直前になって、執行部はすでに東京選挙区からの立候補が決まっていた大河原雅子氏の公認を取り消すことを決定。公認候補を鈴木寛氏に一本化して「共倒れ」を避けるための苦肉の策だった。だが、菅氏は執行部の決定に反して大河原氏の側についた。ブログによると、
「私はこれまでも『原発ゼロ』を鮮明にしてきた大河原さんを支援してきたが、民主党の公認がなくても大河原候補を全力で応援する」 「『脱原発』の活動は1986年のチェルノブイリ原発事故の頃からで、筋金入り」
というのがその理由だ。大河原氏は菅氏と同様に市民運動の出身だという点も後押しにつながったようだ。
細野幹事長「もう退場してもらっていい」
執行部からすれば「反党行為」とも言える行動で、細野幹事長は強く反発。 7月5日には記者団に対して
「しばらく黙っていてほしい」
と不快感をあらわにし、7月8日に横浜市内で行った街頭演説では、
「これから党の中心は私のような40~50代にさしかかる世代。厳しいが、決めたことはしっかり守っていく」
と、党内のガバナンスを強化する考えを強調。
「それが出来ない方々には、もう退場してもらっていいと思っている」
とまで述べ、菅氏らを念頭に事実上の「退場勧告」まで突きつけた。
それでも菅氏に対しては何の効果もないようで、7月9日には、立川駅で大河原氏の応援演説をしている。
ただ、執行部が実際に「反党行為」を処分できるかは不透明だ。菅氏以外にも、大河原氏の支援を続けている民主党所属議員がいるからだ。例えば7月9日の応援演説では、菅内閣で官房副長官を務めた福山哲郎参院議員の姿も確認されている。福山氏は、ツイッターで民主党が候補として一本化した鈴木氏の応援演説にも出向いたことを強調した上で、
「一方、『大河原雅子』候補とは選挙前から応援に行くと約束をしていました。DV防止法改正や障害者差解消法などで一緒に活動した友人の一人として、立川駅前の街頭演説に伺いました」
と釈明。議員ごとに事情が異なることもあり、仮に処分するにしても難しい判断を迫られそうだ。
安倍首相には「名誉毀損を正す他の手段を検討せざるを得ない」
菅氏は「60の手習い」とばかりに、ツイッターの利用も活発化。7月10日には
「ツイッターに慣れなくて、苦戦中。試行錯誤で少しづつ(ママ)スキルアップを図っている」 「色々アドバイスを頂いてありがたい。今は敦賀に向かう汽車の中。落ち着いたところでリプライの仕方など習得したい」
とツイートし、ツイッター利用者からの質問に次々と答えた。
翌7月11日のブログでは、安倍晋三首相にも矛先を向けた。安倍首相が「誤解」を広めているという批判だ。
「福島原発事故で、当時の菅総理が海水注入を止めたためメルトダウンを引き起こし、福島原発事故がひどくなったという今も広く信じられている誤解。この嘘の情報を最初にネット上に発表したのが2011年5月20日付けの安倍晋三氏のメルマガ」
安倍首相は訂正要求に応じないとして、今後、さらに強い手段に出る考えだ。
「ネット選挙解禁を強力に進めた安倍総理の責任は重い。週明けまで安倍総理から何らかの反応がない場合には名誉毀損を正す他の手段を検討せざるを得ない」