3人組テクノポップユニット「Perfume」(パフューム)の世界進出が進行中だ。2013年6月には世界最大の広告国際祭「カンヌ国際広告祭」に日本人アーティストとして初めて登場しパフォーマンスを披露して大絶賛を浴びた。
そのフランスの有名女性誌「ELLE」がパフュームの特集を見開きで組み大絶賛したのだが、パフュームを「まるで放射能だ(radioactives)」と形容したため、日本のネットでは原発事故を揶揄しているとし「皮肉が酷すぎる」「抗議すべき記事だ!」などと騒ぎになった。
「広島出身のパフュームは放射能パワーを誇っている」
フランスにおける報道で記憶に新しいのは12年10月に国営テレビの情報バラエティー番組「フランス2」で、日本サッカー代表のゴールキーパー、川島永嗣選手の腕が4本ある合成写真を作り放映し、
「福島(第1原発の事故)の影響ではないかと思う」
と司会者が発言をしたこと。
これは12日に日仏戦があり、フランスが日本にが0-1で敗れたのは日本に素晴らしいGKがいたからで、実はそのキーパーには腕が4本あった、というパロディーだった。在フランス日本大使館はテレビ局に抗議し、ファビウス外相が玄葉光一郎外相(当時)に 謝罪することになった。ただし、司会者は冗談に謝罪するというのは「ばかげたことだ」などとメディアのインタビューに答えていた。
今回の「ELLE」(13年6月発売号)では川島選手の「事件」と似たようなことが起こったのではないか、とネットで話題になった。
記事全体はパフュームを絶賛する内容で、見出しは「パフュームの音楽、ルックス全てが我々を魅了する」となっている。もともと日本での人気は非常に高く、日本の電波を独占し、オリコンランキングでも常に頂点に位置するとして、こんな説明を書いたのだ。
「メンバーのかしゆか、あ~ちゃん、のっちの3人は広島出身であり、その魅力とパワーは放射能だと彼女たちは誇っているかのようだ。私たちの中にその放射能は入り込んで来るし、そして私たちの心は魅了されてしまう・・・」
フランスメディアはあえて物議を呼ぶコメントを流す
日本のネットではこの記述に驚き、何を言いたいのか分からない、これはパフュームを絶賛する記事ではなく原発事故を非難するとともにパフュームを落とし込める目的なのではないか、といううがった見方をする人もいて、
「放射能が肯定的なわけないだろ」 「放射線浴びたいやつはいないだろ。放射能を持つ物質に近づきたいやつはいないだろ」 「日本が被災して困っている事にパフュームを例えるってアフォだろフランス人」
などといった声が挙がった。
いったい何が目的で「ELLE」は「放射能」という言葉を使ったのだろうか。フランスの現代事情にも詳しい澤田直立教大学文学部文学科フランス文学専修教授に話を聞いてみると、福島の原発事故はフランスにも大きなインパクトを与えた出来事だったが、今回のパフュームの記事に関して「悪意」のようなものがあったとは必ずしもいえない、という。それは日本の一般的なメディアは客観的な立場で中立を守ろうとするが、
「フランスの場合はあえて物議を醸そうとする、そんなコメントが好きなんです。川島選手の場合でも負け惜しみのようなものがあったとは思いますが、インパクトを求めて際どい事を短絡的にやってしまった」
パフュームに関しても彼女たちの素晴らしさを表すためにはどんな例えがいいか、それで「放射能」が一番インパクトがあると判断したのではないかと説明した。日本とフランスは現在、国を挙げて原子力発電所の共同事業をしているため、「放射能」というのは両国を結ぶ旬なキーワードだと思ったのかもしれない、と澤田教授は解説した。