J-CASTニュースの姉妹サイトとして、2013年7月10日からJタウンネットの配信が始まった。名前の通り、日本の町をネットでつなぎ、身の回りからの情報を発信する。国境を越えたメディアであるインターネットを、身近な情報のサービスにも活用する試みだ。これはJ-CASTにとって創業以来の目標、課題だった。
「真珠の首飾りの女」などで人気のオランダの画家、ヨハネス・フェルメールは、生涯のほとんどを故郷デルフトで過ごし、「半径500メートルの画家」と言われている。17世紀オランダでは、多くの市民はこの範囲で生活をしていた。
コミュニティとはと聞かれ、1日に馬車で行ける範囲と定義した先人もいる。
現代人の行動範囲はそれほど狭くはないが、多くの人の日常生活はいまも居住地域が基盤となっている。出かける、周りを見る、買い物をする、人に会う、話す、聞く。ネット時代になっても、身の回りの情報が人の判断、行動に影響を与える。情報との物理的な距離が意味を持つ。
J-CASTニュースは1.5次情報という性格付けをした。新聞、テレビが伝える事件、事故など速報ニュースが1次情報、これに対して雑誌は、視点を定めた2.0次情報で、読み物になっている。J-CASTニュースは雑誌のような視点を定めた読み物とし、新聞に負けないスピードで配信する。1次と2次の中間で、1.5次情報と考えてみた。
この延長線上で、Jタウンネットは0.5次情報ではないか。まだ、ニュースにもなっていない話題、見聞、体験。ニュース記事として整理されていないが、身の回りに漂う情報の皮膚感触である。問題とか、課題ではない。役に立ち、喜怒哀楽を小さく刺激する。生活や人生の空間情報である。いずれはそれがニュースに発展することもある。
インターネットは利用者が直接世界の情報につながる仕組みである。まず、近くの情報網に出て、そこから世界に出る方法もいいではないか。そう考えたのが、ジェイ・キャストが保有するエリアターゲットの特許技術である。まず、利用者の都道府県の情報が表示される。近いところからスタートして、外界へ出ていく。Jタウンネットはこれを実現する。
0.5次情報はブログやツイッターのように、専門記者でなくても発信できる。近隣の読者が見れば、情報の確度やセンスをチェックできる。広告も同様に、読者による内容の判別が難しくない。自然と良質なものが生き残る仕組みが作れそうだ。実は、町の看板、新聞の折り込み広告、地域フリーペーパーは、これまでも0.5次情報の特性が活用され、ビジネスとして長い経験、ノウハウを積んできた。これをネットに生かす。
世界的、全国的なニュースが地域ニュース、情報より優れているとは必ずしも言えない。0.5次情報の中に、とても大切な情報がある。その例として、J-CASTニュースで始めた「被災地からの寄稿、岩手・大槌町から」をご覧いただきたい。距離の遠いところで読んでも心が打たれる身の回りの情報である。
J-CASTニュース発行人 蜷川真夫