先進的な介護施設は何を考え、何に悩んでいるのか――-2013年 6月29日、東京で医療介護福祉政策研究フォーラムの第1回実践交流会が開かれた。同フォーラムは元・厚生労働省の社会・援護局長を務め、現在は内閣官房社会保障改革担当室長に戻った中村秀一さんが理事長の法人だ。事務局長を私の元同僚で朝日新聞論説委員だった梶本章さんが引き受けている。
本人ができるところはさせるようにする
演者はいずれも地方で介護施設を運営して成功し、施設不足の東京周辺に進出したすぐれ者経営者ばかりだった。印象に残ったいくつかを紹介したい。
地域全体を特別養護老人ホームにしたい、という小山剛さんは新潟県長岡市の高齢者総合ケアセンターこぶし園の総合施設長だ。施設では毎日3食付き、24時間サービスなのに在宅介護はそうではない。それでは施設介護に向かうのは当然ではないか、との指摘が新鮮だった。
200 メートルとか300 メートルの施設内の距離を3000メートルとか5000メートルに延ばし、家族が果たす役割分以外を引き受けるのが将来の介護制度という意見には一理も二理もある。
山口県の社会福祉法人夢のみずうみ村理事長の藤原茂さんは、通所介護施設での自立支援を意図している。高齢者の世話を徹底するのではなく、まずは見守り、本人ができるところはさせるようにする。施設では「できる」と評価しているのに、家族が自宅で「食事の支度」「家事」「金銭管理」「1 人での遠出」などを全くさせないケースが3 割から4 割にもなっている。
日本の施設はよろよろ歩ける人を面倒だからと車椅子にしてしまうが、家族も介護のしすぎで高齢者の能力を奪っている。6月27日の『朝日新聞』には、藤原さんたちの千葉県浦安市のデイサービス施設が、わざわざ階段などのバリアーを作り、本人の能力を取り戻す試みをしていると紹介された。
鳥取県境港市の社会福祉法人こうほうえんの広江研・理事長は「互恵互助」の精神での職員教育の徹底ぶりを、札幌市の社会福祉法人ノテ福祉会の対馬徳昭・理事長は随時対応型の訪問介護の状況を報告した。
(医療ジャーナリスト・田辺功)