安倍晋三首相の選挙演説で、女性が持っていたプラカードが一時没収される動画がアップされ、論議になっている。
動画は、この女性が参院選公示日の2013年7月4日にツイッターを通じてユーチューブにアップした。
「原発廃炉に賛成?反対?」と質問
この日は、安倍晋三首相は福島県入りし、自民党候補の応援演説をした。動画はそのときに撮影したとみられる。
「総理、質問です。原発廃炉に賛成?反対?」
女性のフェイスブックによると、プラカードには大きくこんな字が印字されていた。3分強の動画では、女性は、3人ぐらいの男性に囲まれ、このプラカードが没収される様子が映っていた。うち1人が「これは演説会であって、質問は国会の場所で。国会とかそういう質問して応答する場所でないですから」といい、別の1人が自民党員だとして名刺を差し出し、後でプラカードを返すと説明した。
男性らは、「すみません」と謝りながらも、女性の住所や名前を詳しく聞き、連絡先も教えてほしいと依頼した。女性が連絡先を伝えるのに渋ってもう帰ると言うと、男性らは、演説は聞いてもらっても構わないと説明した。しかし、女性はそのまま立ち去っていた。
この動画は、ネット上で話題になり、それを見た人らから疑問の声が上がった。自民党員らが一時没収する行為について、「これはおかしいだろ」「安倍さんや今の自民党って批判は一切見たくないんだよ」「言論封殺かよ・・・」といった指摘が出ている。
ツイッターなどでは、安倍首相の演説で抗議をしたりプラカードを出したりすると、SPらから排除されたといった報告もいくつかあった。ここのところ、参院選圧勝の見通しが報じられる自民党がやや傲慢になっているのではといった指摘が出ているようだ。
言論封殺ではなく、安全確保などのため?
この女性は、ジャーナリストの岩上安身さんのインタビューに対し、プラカードを持ち込んだ理由について明かしている。インタビュー動画を見ると、自民党福島県連が2012年の衆院選で県内にある原発10基すべてを廃止する公約をしているのに、安倍首相らが再稼働に前向きな姿勢を見せているのは納得できなかったと説明していた。
自民党福島県連の事務局次長は、取材に対し、女性のプラカードを一時没収したことについて、こう説明した。
「現場にいたわけではないので、詳しい理由については分からないです。ただ、安全は確保されなければいけませんし、静かに聞きたいという人もたくさんいますので、話を聞く妨げになるという心配もあったでしょう。また、通行の支障にならないようにということもあったかもしれません。プラカードは一時お預かりしただけで、取り上げたり押さえ込んだりといった問題になるようなことはなかったととらえています」
また、自民党が原発再稼働に前向きとされることについては、こう釈明する。
「自民党は、日本全体のエネルギー政策を考え、安全がクリアされれば再稼働するというスタンスです。しかし、県内では原発すべてを廃炉するという公約は今でも変わりませんから、そのことと矛盾しないと考えています」
なお、プラカードの女性は、母親として放射能汚染から子どもたちを守る運動を県内でしており、脱原発を呼びかける首相官邸前の集会にも参加している。また、フェイスブックの写真には、原発反対を訴える別のプラカードが映っており、アップした動画も事前にビデオカメラを持ち込んで撮影していたようだ。ただ、動画を見ると、原発反対に来たのではなくて、安倍首相がどう考えているか知りたかっただけだと主張している。