日本航空(JAL)は、すべての外国人株主に配当できるよう、2013年6月19日に開いた株主総会で定款の変更を決定した。これまでは航空法に基づき、議決権の3分の1を超える株主は株主名簿に記載できず、配当できない仕組みになっていた。一方、自民党議員からは「公的資金で再生した日航の利益を外国人株主に配当として支払うのはおかしい」との批判が上がっており、日航への圧力が強まる可能性もある。
株主名簿に記載されていない株主がいる
航空法は、外国人が国内航空会社の経営に影響を及ぼさないよう、外国人株主の議決権比率を3分1未満に抑えるよう制限している。このため、日航では3分の1を超える外国人の持ち分は株主名簿に記載していない。
これまでの日航の定款では「株主名簿に記載された株主」にだけ配当すると規定しており、株主名簿に記載のない外国人には配当できないことになっていた。しかし、日航は「外国人、日本人にかかわらず、すべての株主に平等に配当すべきだ」として解決策を検討。株主名簿に記載されていなくても、証券保管振替機構に記載された株主には2014年3月期から配当できるよう、定款変更を株主総会で提案し、賛成多数で承認された。
日航は2010年1月に会社更生法の適用を申請して経営破綻し、昨年9月に東京証券取引所に再上場を果たした。再上場する際、国内外に広く株主を募ったことや海外での知名度の高さを背景に、外国人の持ち株比率は高まり、当時で約38%、今年6月中旬段階では約47%に達する。株主全員に配当できるようになることで、日航の懸案の一つが解消された。
ANA「平等な競争条件ではない」
とはいうものの、根深い批判があるのも事実。安倍晋三政権が誕生した直後の今年2月の参院予算委員会で、自民党議員が「利益の4割を(配当として)海外に出すのは売国的な行為だ」と指摘、日航による外国人株主への配当方針を激しく非難した。「日航が配当できるようになったのは、国民負担があったためだ」というのが理由だ。この発言に応じるように、麻生太郎財務相も「税金で助かった会社の配当が海外に行くのは腑に落ちない」と述べた。
こうした批判の背景には、民主党政権時代に多大な公的支援を得て再建した日航に対し、「公正な競争が成り立っていない」という自民党や日航の最大のライバル、ANAホールディングスの反発がある。実際、ANAホールディングスの伊東信一郎社長は日航の株主総会から約1週間後の6月27日に開いた自社の株主総会で、日航との競争について株主から問われ、「平等な競争条件ではない」と改めて不満を示した。
日航はあくまで「株主を平等に」という姿勢で定款変更に踏み切ったが、逆風は容易には収まらない気配だ。