仏経済紙「カルロス・ゴーンは日産では成功したが、ルノーでは…」
それはそうとして、では何故、フランスでは報酬がこんなに低く抑えられているのだろうか。
一つには、仏ルノーの不振がある。ルノー日産によると、2012年の世界販売台数は前年に比べて0.9%増の810万台で、過去最高を更新した。このうち、日産は暦年で過去最高となる5.8%増の494万台。しかし、欧州の景気低迷の影響でルノーは6.3%減の255万台と落ち込み、そのために世界販売ランキングは11年の3位から4位に後退した。
フランスの日刊経済紙「La Tribune」(電子版)は、「カルロス・ゴーンは日産では成功したが、ルノーでは…」(2013年5月7日付)と題する記事で、日仏での報酬の差を引き合いに出しながら、「二つの企業の間には明らかな不均衡がある」と指摘する。それによれば、日産とルノーがアライアンスを組む前の1998年のそれぞれの販売台数は、日産が260万台、ルノーは220万台と今ほどの開きはなかった。日産だけが復活し、ルノーが低迷に喘いでいるのは、ゴーン社長が日産に肩入れした経営をおこなっているからだとの指摘も労働団体からあがっている。
もう一つは、フランスで高額の役員報酬が問題視されていることだ。社会党のフランソワ・オランド大統領は、12年の選挙中から政府が株式を保有する大企業に対して、CEOの給与を正規社員の最低賃金の20倍まで抑えるなどの基準を訴えてきた。当選後の12年7月には公営企業の役員報酬の上限を45万ユーロに抑える法律を成立させた。ルノーは民営化された今なおフランス政府が15%の株式を保有しており、フランス世論では、こうした基準に沿った自制を求める声が強い。
ゴーン氏がルノーでの今年の報酬の可変分を前年比30%減らしたのは、こうした批判をかわすためだという。