参院選に向け自民・民主などが検討してきた、いわゆる「ブラック企業」の社名公表だが、結局ともに公約に明確な形で盛り込むことは見送られた。
特に自民党はワタミ創設者・渡邉美樹氏擁立で物議をかもしており、その姿勢に注目が集まっている。
4月に「公表」など厳格姿勢打ち出した自民
ブラック企業の社名公表は、自民党の雇用問題調査会が2013年4月19日にまとめた提言案で取り上げられ、話題となった。これは若者の正社員雇用拡大を目指す取り組みの一環として挙げられたもので、相談窓口の設置や離職率が極端に高い企業などの把握とともに、
「サービス残業など法違反が疑われる企業等に対しては、労働基準監督署が立入調査等を行うとともに、重大・悪質な違反をする企業等に対しては、司法処分により厳正に対処し、公表を行う。さらに、法違反により過労死などの重大な労働災害を繰り返して発生させた企業・事業所名の公表について検討を行う」
と、社名公表の「検討」が明記されていた。
この提言案は参院選公約への「叩き台」とみなされ、ネット上では歓迎ムードが強かった。一方で発表直後に日経新聞が「具体的な線引き基準の設定は困難」と指摘するなど、実現性については早くから疑問の声が相次いでいた。結局、6月20日発表された総合政策集「J-ファイル2013」では、
「正社員として就職した若年者の早期離職の発生防止や若者の『使い捨て』が疑われる企業への対応策を強化します」
との表現に留まった。提言案の内容、特にこうした具体策の部分は必ずしもすべてが公約・政策集に反映されていないとはいえ、ネットでは渡邉氏擁立と絡め自民の姿勢が「後退」したのでは、との声も出た。
「公表」盛り込んだのは公明、共産、社民
民主党も同様だ。2013年6月3日、マニフェスト「原案」の内容が各紙に報じられたが、この時点では「悪質企業の社名の公表」を盛り込んでいた。しかし、6月25日の最終版には、「いわゆる『ブラック企業』問題については、求人票に離職率を明記させることをめざします」とあるのみ。自民ともども、明記を避ける形となった。
一方、公明党と社民党は、社名公表を公約などに盛り込んだ。たとえば公明党は、
「若年労働者などに対して劣悪な労務環境下で仕事を強いる企業への対策を強化します。具体的には、違法の疑いがある企業等に対する立入調査の実施、重大・悪質な場合の司法処分および企業名の公表、一定規模以上の企業に対する離職率等の公表義務化を検討します」
と「重点政策」の中に記した。共産党もサービス残業根絶を強調し、「悪質な企業には、企業名を公表するとともに、不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせるようにします」とする。また社民党も、ブラック企業の取り締まり強化と企業名公表を打ち出している。