移籍金払うほどではないが、相応の金額なら欲しい
本田選手の力量を石井氏は、「日本人の器用さと敏しょう性に欧州の強さを備える。ただし、クリスティアーノ・ロナウド選手(レアルマドリード)やリオネル・メッシ選手(バルセロナ)のようにスピードはない」と評する。法外な移籍金を支払うほどではないが、相応の金額で獲得できるならばぜひ欲しい、というレベルと見る。仮に年俸3億超としても、日本代表の同僚でマンチェスター・ユナイテッド所属の香川真司選手の推定年俸よりは低い。要するに「お買い得」なのだろう。
6月にブラジルで行われたコンフェデレーションズカップでのプレー内容も、獲得を目指すチームを納得させたのではないかと石井氏。サッカー解説者のセルジオ越後氏は日刊スポーツの連載コラムで、本田選手を「最悪な調子のイタリア相手にだけまともなプレーができて、ブラジルやメキシコに真剣にプレスをかけられたらお手上げ。あんな状態で90分間使ってもらえる方がおかしいよ」と厳しく批判した。だが石井氏は、度重なるケガを乗り越えたうえ、ワールドカップアジア最終予選から間もないコンフェデ杯だったにもかかわらず、3試合に出場して一定のパフォーマンスを見せたと評価した。これでミランは、ある程度の年俸を支払う価値を見出したのだろうか。
石井氏は、本田選手がミランにもたらす「付加価値」も挙げた。つまり、入団により「ジャパンマネー」が期待できるというのだ。ユニホームをはじめとする球団グッズの売り上げや日本人ファンの観戦者増が望めるうえ、アジア市場への進出も視野に入ってくると指摘する。日本企業のスポンサーを獲得できるかもしれない。ミランの名誉会長として君臨するのは、イタリアのベルルスコーニ元首相。何かしら「そろばん勘定」をしていても不思議のない人物だ。
とは言え、実力がなければいくら有力チームに移っても試合で起用してもらえない。その点、石井氏は「ミランでも十分通用する」という。選手としての素養だけでなく、コミュニケーション能力の高さを評価した。強豪チームともなれば個性豊かなタレントがそろうが、「本田選手は自分の主張をはっきり伝えられる性格。自信をもってプレーし、周りを上手に生かしながら自分自身も実力を発揮できるでしょう」。