「あなたは安藤美姫選手の出産を支持しますか?」「子育てをしながら五輪を目指すことに賛成ですか?」――週刊文春の公式サイトが2013年7月4日、こんなアンケートを掲載した。これが、安藤選手の生き方や出産そのものを批判しているようにしか見えないとネットで「大炎上」し、アンケートは削除されるとともに、編集長が謝罪に追い込まれる事態になった。
「出産を支持しないってなんだろな。もう生まれてるのに」
週刊文春WEBは、「緊急アンケート!安藤美姫選手の出産を支持しますか?」と題した記事で、アンケートへの回答を募っていた。フィギュアスケートの安藤美姫選手(25)が女児を出産したことを告白し、来年のソチ五輪を目指すと語った。これを受け、
「この突然の告白に対し、出産を祝福する声が上がると同時に、まだ結婚しておらず、父親が誰かも明かさないことへの疑問や、子育ても競技も中途半端になるのではないかなどの批判もあります」
と説明をつけた上で、冒頭の質問項目を並べていた。
「あなたは安藤美姫選手の出産を支持しますか?」
「子育てをしながら五輪を目指すことに賛成ですか?」
これが、ネットで大変な怒りを買った。ツイッターではこのページのURLが5日14時30分の時点で1万6000回以上ツイートされた。そのほとんどが「否定を引き出す質問だ」「このアンケートを支持しない」とする怒りの声だ。
「こども産んだらこんな仕打ちにあうのかよ。どこの国ですかね。こわいわー」
「こんなことしてたら、婚外子差別撤廃どころか、少子化も解消できないよ」
「人様の人生と生まれた赤子ちゃんに支持するも支持しないもねえよ 何様なんだよ」
とりわけ女性からの反発が強いようで、人気漫画「臨死!!江古田ちゃん」の作者瀧波ユカリさんは「『安藤美姫選手』の部分を自分の名前に置き換えて読んでみたら喉元がウェッてなって泣きたくなった」、「のだめカンタービレ」の作者で漫画家の二ノ宮知子さんは「出産を支持しないってなんだろな。もう生まれてるのに。私ものだめの連載中に妊娠公表したとたん、こんな大事な時に妊娠するなんてプロ意識がないとか言われたなあ。私は今が1番大事な時だと思ってずっと仕事してて気がつけば30も後半になっちゃって、やっと妊娠したと思ったら流産もしたし、子宮筋腫で手術もしたので、妊娠できてどれだけうれしかったか。そんな中で批判されて、その時はクソみたいな人間ているんだなとしか思いませんでしたが」などと不快感をツイートしている。
「出産そのものを否定したり、働きながら子育てをすることを批判しているような印象をあたえた」
抗議が殺到したためか、アンケート記事は15時ごろに削除され、しばらくして同じURLで「安藤美姫選手出産アンケートについて」と題する記事がアップされた。
「週刊文春」の新谷学編集長の署名入りで、「女性の出産という大変デリケートな問題にもかかわらず、設問を『出産を支持しますか?』『子育てしながら五輪を目指すことに賛成ですか?」』してしまったために、出産そのものを否定したり、働きながら子育てをすることを批判しているような印象をあたえてしまいました。その点については、編集長の私の責任です。このアンケートに関して不快な思いを抱かれたすべての方にお詫び申し上げます。今回のアンケートは中止させていただきます」と謝罪している。
ただ、これでも騒動は鎮火しておらず、週刊文春に連載を持っている映画評論家の町山智浩さんは「まず安藤美姫選手本人とすべての未婚の母と子に謝罪すべきだな」とツイッターで指摘した。この見方に同意したり、「誤解を与えたのではなく、そう思ってたからアンケート取ったんだろ」「言わなれきゃわからないのか」といった声は多く、16時30分現在、謝罪記事は約2万4600回リツイートされている。
なお、この件について週刊文春編集部は、「ネット上に掲載したことがすべてです」としている。