エジプト情勢が緊迫するなか、原油価格が高騰している。米ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場は2013年7月3日、3日続伸。期近の8月物で一時1バレル102.18ドルと、約1年2か月ぶりの高値を付けた。
その一方で、為替相場で円が再び100円台の円安水準に乗せてきたことで輸入コストが上昇。原油高と円安の「ダブルパンチ」で、電力をはじめ日本経済への影響が懸念されはじめている。
NY原油、1年2か月ぶり高値
エジプトの政治混乱が金融市場に飛び火している。NYMEXの原油先物価格は2013年7月3日、国際指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で期近の8月物が前日比1.64ドル高の1バレル101.24ドルで取引を終えた。週初めに比べて、約4%の上昇だ。
緊迫を強めるエジプト情勢をきっかけに、原油は中東や北アフリカから供給が滞るとの懸念が浮上。また同日、米エネルギー省が発表した石油在庫統計で、原油在庫が前週から減少したことから、原油の需給が締まるとの連想が働いて「買い」が入った。
ここでも投資の「主役」はヘッジファンド。商品先物取引などの大起産業・情報調査室室長で商品アナリストの小菅努氏は、「100ドル超えはないとみていたヘッジファンドが一斉に売りポジションの解消を迫られていることが、原油価格の高騰をエスカレートさせています」とみている。
エジプトは石油輸出国機構(OPEC)の非加盟国としてはアフリカ最大の産油国で、直近では日量54.5万バレルの産油量が確認されている。また、天然ガスについてもアルジェリアに次ぐ生産規模を有しており、エネルギー生産国としての重要性は高い。
地理的には、アフリカやペルシヤ湾岸と欧州を結ぶ輸送拠点としての重要性も高く、「この地域の政情不安が原油高圧力に直結するのは何ら不思議なことではない」と、小菅氏は指摘する。
じつは、ここ数か月も原油価格は安かったわけではない。昨年来の米シェール革命などで「原油は余る」といわれてきたが、実際には「サウジアラビアなどの産油国が減産していて、原油は余ってはいませんでした。そういった状況のなか、むしろエジプトの混乱が起こったことで、価格高騰を勢いづけてしまいました」と話す。
少なくともエジプトの緊張が続くあいだは、原油価格の高止まり傾向は一段と強まる。「当面、原油価格の大幅な値下がりは考えにくい」と、小菅氏はいう。
ガソリン価格も高止まり「下落の兆候みられず」
一方、1年2か月ぶりの高値を付けたNYでの原油高は、すぐさま日本にも影響を及ぼすのだろうか――。前出の商品アナリスト、小菅努氏によれば、「現在の原油高が消費者の生活に現れてくるのは、たとえばガソリン価格でいえば1~2か月後になります」と話す。
資源エネルギー庁が2013年7月3日に発表したレギュラーガソリンの店頭小売価格(7月1日時点の全国平均)は前週比0.1円下落の151.9円と、3週間ぶりに下落に転じている。これは「6月上旬の急激な円高による原油調達コストの低下が反映されたもの」という。
しかし、6月下旬以降は再び円安傾向が強まっている。小菅氏は、「実際に東京商品取引所のガソリン先物相場は高止まりが続いていて、末端の小売価格が下落する兆候はみられません」という。