パワープレー得意な豪州、韓国には有利か
守備を任される選手にとって、今回の変更は厄介だろう。相手攻撃陣がオフサイドの位置にいても、自分のプレーによっては相手の反則とならず不利な判定が出されるからだ。自陣に球が飛んできて、ヘディングでクリアしようとしたら失敗して後ろにそらし、こぼれ球がオフサイドポジションの敵に渡れば即失点につながりかねない。逆にクリアしようとせず球に触らないままであれば、相手はオフサイドをとられる。だがもしそのボールが、オフサイドでない位置にいた敵のプレーヤーに奪われたら一大事だ。「ディフェンダーは、攻め手が来れば当然防ごうとする。でも場合によっては、必死にボールをクリアしようとした行為がかえってピンチを拡大することになりかねなくなります」(石井氏)。
代表クラスの選手にとっても、たとえ戦術面に大きな影響をもたらさないとしても、とっさのワンプレーがもたらしたオフサイドの判定がゲームの行方を大きく左右する可能性がある。どうしても得点がほしい試合展開なら、終盤でロングボールを蹴って一気に前線に放り込むケースは少なくない。「豪州や韓国のように、日本よりもパワープレーが得意な代表チームにとっては有利になるかもしれません」と石井氏は話す。
実は日本代表の戦いで近年、今回の変更の「教材」となり得る場面があった。2011年1月14日、アジア杯1次リーグの日本-シリア戦。後半24分、DF今野泰幸選手のバックパスの勢いがやや弱く、相手選手が奪おうとゴールに駆け寄ってきたところでGK川島永嗣選手がクリア。ところがボールが再び相手選手の足元に飛び、蹴りだされた球はオフサイドポジションで待っていた別のシリア選手に届いた。そこへ川島選手が飛び込んでシュートを防ごうとしたところで主審が笛を吹いたのだ。
線審はシリア側のオフサイドと判定したが、主審はこれを認めず川島選手の反則としてレッドカードを突きつけた。当時はこのジャッジが議論を呼び、石井氏も「厳しい」とうなったそうだ。だが今回の変更に照らせば「主審は正しかったことになります」。攻撃側に有利となるであろう改正が、2014年のワールドカップブラジル大会でドラマを生むかもしれない。