牛丼チェーンの「吉野家」が、品揃えを充実する。まずは牛丼(並盛)より200円高い「牛カルビ丼」などを投入。また、女性をターゲットに「小盛」サイズも用意する。
牛丼の低価格を維持する一方で、「プチぜいたく」のニーズを取り込んでいく作戦で、安倍政権の経済政策「アベノミクス」による景況感の改善を背景に、高品質を求める消費者への対応を強化する。
「おいしさの評価アップ」に自信
吉野家が2013年7月4日から発売する「牛カルビ丼」と、夏季限定発売の「ねぎ塩ロース豚丼」は、いずれも並盛り480円と牛丼(並盛)より200円高いが、希少部位の肉を使うなど、素材とボリュームが売りだ。
同社は5月の売上高(既存店ベース)が前年同期に比べて15.9%増、客数で31.0%増だったが、客単価は11.5%減に終わった。
吉野家は牛丼用牛肉のほぼ全量で米国産を使用している。13年2月の輸入規制の緩和で、米国産牛肉の輸入対象牛の月齢が「20か月以下」から「30か月以下」に広がったことから、調達量の拡大や調達価格の下落が見込まれ、牛丼(並盛)の価格を4月18日から280円に値下げした。
4月の牛丼値下げで売上高はアップしたが、客単価の向上が新たな課題に浮上。今後は高単価メニューの拡充で収益向上を狙う。
一方で使用する牛肉は、牛の飼育期間が長くなったため、従来の牛肉より脂身が多くなり品質も高まった、とされる。
吉野家は今回の新商品の投入をセカンドステージとし、「ネクストバリュー商品」と位置付けている。「第1弾」といえる、4月からの牛丼の値下げについて同社は「『価値の再設定』に成功したと認識している」と話す。
同社が4月の値下げ伴う「吉野家のイメージ」を調査したところ、「安さ」の評価よりも「おいしさ」の評価のほうが、「2011年の調査に比べて大幅にアップした」そうだ。
「おいしさ」の評価が高まったことで、セカンドステージでは「驚いてもらえる商品」の投入を進める。「ワンコインにこだわりながらも、バリューを高めて、それに見合う商品価格で提供していく」としている。
女性客向け「小盛」サイズも投入
一方、吉野家の「牛カルビ丼」と「ねぎ塩ロース豚丼」には、女性客を意識した小さなサイズ(いずれも380円)を用意した。
同社が「小盛」を全国発売したのは初めてで、競合する他の牛丼チェーンと同様に、女性客やファミリーなどの幅広い客層を開拓するのが狙い。
牛丼チェーンは、カウンターで男性客が牛丼を頬張るイメージが根強いが、吉野家では「現在は郊外店のほとんどで、ファミリー客にも利用しやすいようにテーブル席を設置しています」と話している。
メニューも2012年8月から、郊外店を中心に「お子様メニュー」を用意するなど拡充しており、「小盛」サイズもその一環。今後は他の商品にも導入していく方針だ。