参院選の公示を目前に控え、各政党の選挙戦略が出そろった。ネット選挙解禁後初めての選挙だということもあって、立候補予定者はユーチューブといった動画サイトはもちろん、ツイッターやフェイスブックといったソーシャルメディアの活用にも積極的だ。大半が政策の内容を訴えたりするオーソドックスな内容だが、中には奇抜なパフォーマンスに走る人もいるようで、ネット利用者の受け止めはさまざまだ。
名前を連呼する歌には「オチがない」
政党レベルでは、インターネットを利用して有権者にアピールする取り組みはかなり進んできているが、候補予定者のレベルでも、独自の取り組みが進んでいる。例えばネット上で話題になっているのが、千葉選挙区(定数3)から出馬予定の豊田俊郎氏(60、自民)だ。豊田氏は千葉県議を経て03年に八千代市長に初当選。自民党県議団内の最大グループ「県盛会」に推される形で任期途中で市長を辞職し立候補に踏み切った。
ウェブサイトは自らのプロフィールや政策を並べたオーソドックスな内容だが、異彩を放つのがユーチューブの活用方法だ。30秒程度の短い動画を何本も投稿するのが特徴で、1本目の「豊田、市長やめるってよ」と題した動画では、市民が
「なんでだよ!としろう!」
などと任期途中の辞職に困惑する様子をドラマ風に表現している。
「メインテーマ」の動画もつくった。独特な音楽に乗せて、中年の女性が踊りながら「♪としろうとしろう♪とよだとしろう♪」と名前を連呼する内容だ。豊田氏のツイッターによると、
「クセになりそう。夢に出る。出ているのは奥さんだろうか?オチがない。浅原(原文ママ)彰晃の歌みたい」
といった感想が寄せられたという。
残り1議席めぐり候補が乱立
また、「ヴィジョンを語る」という動画では、豊田氏は
「新しいステージに立って政治活動を続けていきたい」
などと決意表明しているのだが、どういう訳か豊田氏の背後にパンダの着ぐるみが登場するなど、全体的に奇抜さが目立つ。
この千葉選挙区では長浜博行氏(54、民主)と石井準一氏(55、自民)の現職2人が有利に戦いを進めているとみられている。改選数は3なので、残る1席を豊田氏を含めて少なくとも7人が奪い合う構図になっている。このような状況が「インパクト重視」の背景にありそうだが、得票に結びつくかは不透明だ。
これまでネットで話題になった選挙動画といえば、奇抜なパフォーマンスの政見放送や、人気候補の街頭演説など。いずれも勝手にネットユーザーがアップロードして拡散したものだ。今回のように、候補者サイドが最初からネット利用者を意識して奇抜な動画を制作するのは珍しい。
ネット選挙の解禁で、このあと選挙期間中のPR合戦が加速する可能性もある。