今年の株主総会、主役は「社外取締役」 西武HD、トヨタ、キヤノンなどで攻防

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   2013年の株主総会は、西武ホールディングス(HD)と米投資会社サーベラスの攻防など、コーポレートガバナンス(企業統治)をめぐる社外取締役の選任が例年にも増してクローズアップされた。

サーベラスの提案は否決

   6月25日に埼玉県所沢市で開かれた西武HDの株主総会は、同社の筆頭株主のサーベラスが元金融庁長官の五味広文氏、元米副大統領のダン・クエール氏ら8人を取締役として新たに選任するよう提案したが、賛成少数で否決となった。

   「物言う株主」として知られるサーベラスは、西武HDが業績低迷を続け、短期間に業績予想を何度も修正したことなどを「企業統治のあり方に問題がある」と痛烈に批判。「コーポレートガバナンスと内部統制を確立し、経営の透明性を高めなければ、経営上の重大な問題・課題は解決できない」として、社外からの取締役の選任を求めた。

   これに対して、西武HDは、サーベラスが西武鉄道の不採算路線の廃止や西武ライオンズの売却検討を求めていることなどに反対。「サーベラスの提案は中長期的な企業価値を損なう恐れがある」(後藤高志社長)として、株主に賛成票を投じないよう呼びかけた。西武鉄道沿線では、不採算路線の存続を求める声が強く、個人や法人など安定株主の多くはサーベラスの提案に応じなかったとみられている。

   西武鉄道は有価証券報告書の虚偽記載で2004年に上場廃止となり、2006年にサーベラスが出資した。両社は昨年5月ごろから再上場をめぐって意見対立が表面化。サーベラスは西武HD株の株式公開買い付け(TOB)で35.48%を保有し、企業再編や定款変更などに反対できる「拒否権」を握っており、両社の攻防は今後も続きそうだ。

トヨタは初の外国人取締役

   このほか、今年の株主総会では、トヨタ自動車が「経営の意思決定に社外の声を反映するため」(豊田章男社長)として、元GM副社長のマーク・ホーガン氏ら3人の社外取締役の選任を提案し、原案通り可決となった。これでトヨタの取締役は16人となった。トヨタの社外取締役はこのほか、元国税庁長官の加藤治彦氏と日本生命保険相談役の宇野郁夫氏。社外取締役はもちろん、外国人の取締役もトヨタにとっては初めてで、ガバナンスの強化が注目される。

   一方、キヤノンが今年3月に開いた株主総会では、御手洗富士夫会長兼社長の取締役選任をめぐり、ひと波乱があった。キヤノンは社外取締役が一人もいないことからガバナンスが問題となり、御手洗会長兼社長の取締役選任に反対票が集まり、信任は72.21%にとどまり、昨年の90.57%から大幅に低下したのだ。

上場企業の過半数に社外取締役

   特定非営利活動法人「日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク」によると、議決権行使助言会社最大手のISS(Institutional Shareholder Services)がガイドラインに「株主総会後の取締役会に社外取締役が一人もいない場合、経営トップである取締役の選任に反対を推奨する」と明記したことが要因とみられる。マスコミの注目度は低かったが、日本企業にとって、社外取締役はガバナンスの観点から、もはや無視できない存在になりつつあることがわかる。

   東証によると、社外取締役を選任している会社は、東証上場企業(2012年9月10日現在で2275社)の54%で、過半数に達した。2006年の調査開始時は42%で、社外取締役を選任する動きは進んだといえる。

   ところが、1社当たりの社外取締役の平均人数は1.02人で、2006年の調査開始以来、初めて1人を超えたというレベルにとどまっている。社外取締役の出身も「他の会社の出身者」が77%と多数を占め、弁護士、公認会計士、学者ら外部有識者は少数派だ。社外取締役をめぐっては、東証だけでなく、日本弁護士連合会(日弁連)もガイドラインを定め、日本企業に社外取締役を選任するよう呼びかけている。

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