ニホンウナギの稚魚価格高騰が止まらない。その影響で、うなぎ屋の閉店が全国的に相次いでいる。2013年1月には、文化人らに愛されてきた鎌倉の名店「浅羽屋」が、仕入れ値の上昇にともなう客足の減少などを理由に看板を下げ、5月末にも神田の老舗が閉店している。
「・・・・ウナギは、もう高根の花ですね」
水産庁が5月30日に発表したところによると、養殖用稚魚(シラスウナギ)を輸入と国内漁獲で確保できた分は、約12トンで12年より25%減少した。例年は20トン台で推移していたが、2010年から不漁が続き、親ウナギの高騰につながっている。養殖業者が仕入れる稚魚1キロあたりの価格は、12年が215万円で、11年の2.5倍に急騰。2013年は260万~270万円とさらに高値になった。04年比で約10倍に跳ね上がった計算だ。
このためここ数年、うなぎ屋は利益確保のため価格引き上げを繰りかえしている。いまや街角の店でも、2000円以上は出さないと国産のうな重は食べられない。
しかし、こんな値段ではとても手が出せず、「もう何年もうなぎを食べていない」というという人も多い。
「うな重3000円とかだったら食べられません゚。・゚ヾ(゚`ェ´゚)ノ。゚・。」
「・・・・ウナギは、もう高根の花ですね。。」
「平成や、うなぎは遠く、なりにけり」
価格高騰による客足の遠のきを示すように、12年ごろからネット上で、ひいきにしていた店が閉店したという報告が散見されるようになった。東京だけではなく、北海道をはじめ全国で確認できる話のようで、理由は「おいしいウナギが手に入らなくなったから」「仕入れ値高騰」などと書かれている。
老舗といえどもその余波は及んでいる。13年1月30日には、川端康成や小津安二郎、北大路魯山人、大仏次郎ら文化人に愛されてきた鎌倉の名店「浅羽屋」(1950年創業)が、卸値の上昇にともなう客足の減少などを理由に閉店した。5月末には東京・神田小川町のうなぎ専門店「寿々喜」(1909年創業)が閉店したと新聞に取り上げられ、ネットでも話題になった。
「できる限りの努力はしているが…」
神田近辺に店舗を構える老舗うなぎ屋も、「できる限りの努力はしているが、これ以上仕入れ値があがると苦しく、値上げするしかない」と明かす。仕入れ値は週ごとに上昇しており、去年よりも速いペースで上がっているという。
値上がり幅が急激に大きくなった12年から、仕入れ値の上下に合わせて度々メニューの値札を付け替えて対応してきた。現在ではピークより1000円弱下げ、景気回復の効果もあってか、同店では去年に比べれば客足も戻ってきてはいる。
ただ、「(うなぎ屋業界)全体的には、以前と比べるとね・・・」。
なお、客離れのもう一つの要因としては、最近では「うなぎ」の価格が二極化していることが上げられるという。価格が高騰する一方のニホンウナギ(ジャポニカ種)を尻目に、アメリカ産やマダガスカル産など、稚魚の種類が異なるいわゆる「異種ウナギ」がスーパーや外食チェーンを中心に出回り、「うなぎ」自体は安く食べられるようになった。お客の側に選択肢が増えたことで、国産のニホンウナギにこだわって取り扱ううなぎ屋は、二重苦を背負った形だ。