持ち帰り寿しの「小僧寿し」チェーンが、商品ラインナップのほぼ半数にあたる41品目の価格を2013年7月1日から、「1円」値下げする。
安倍政権の経済政策「アベノミクス」による円安進行で原材料が高騰。それに伴い、食料品の値上げが相次ぐなか、同社は「企業の姿勢として、『1円』でも安く、おいしい寿司を提供したい」と説明している。
「お寿司食べる機会増やして、幸せ気分に」
小僧寿しの「1円」値下げは、当初は全国の直営店を中心に257店で実施。7月以降、順次拡大して最終的にはフランチャイズ店を含めた全481店(5月末現在)で展開する予定だ。
「一人前にぎり」セットや、細巻や手巻き寿しなどを値下げ。また、「お好みにぎり」に新商品を投入したり、旬なネタをそろえたりして、消費者に少しでも「お得感」を訴えて、寿し需要を喚起する。
今回の値下げについて、同社は「アベノミクス効果が消費者の一部だけで全体には及んでいない」と指摘。その一方で、「景気回復にはポジティブな気持ちが大切と考えており、お祝いごとの象徴であるお寿しを食べる機会を増やし、お寿しを食べて前向きで幸せな気分になってもらうことで日本経済の回復に少しでも貢献したい」と話している。
「1円」値下げにあたり、同社はメニューの見直しやオペレーションを変更した。14年4月の消費増税を見据えた対応でもある。
メニューの見直しでは、「うに」や「たこ」のにぎりなど6品目を廃止。値下げの一方で、原材料の値上げ幅が大きい「赤えび」や「大穴子」など一部のメニューについては値上げする。
また、バリューパーティー(4人前、2436円)や小僧スーパープレミアム(1189円)、えびやサーモン、まぐろの「セレクト5シリーズ」(357円)など、「プチぜいたく」ニーズを取り込むラインナップを充実。単価の高い「プレミアム」メニューを新たに投入することで客単価を上げ、値下げ分の採算をとる。
「これまではチラシにあるネタをそのまま提供してきましたが、今後は食材の旬を重視して提供することで仕入れコストを抑え、旬のおいしいネタをそのときに食べてもらうようにしました」と、オペレーションも見直したという。
回転寿しに対抗! あえて「値下げ」打ち出す
寿しチェーンでも、アベノミクス効果で高級食材への需要が高まるなか、なお「低価格商品を求める声は根強い」(小僧寿し)。ただ、円安の影響でネタ(原材料)の8割を輸入に頼る寿しチェーンでは、値上げムードが強まっている。
小僧寿しは、「(回転寿しチェーンなどで)値上げが進んでいるが、『安い』『旨い』『ボリュームがある』にこだわっていきたい」という。
とはいえ、小僧寿しは2012年12月期の連結売上高が前期比1.0%減の202億円、営業損益は6億円の赤字と、苦しんでいる。
この第1 四半期(13年1月1日~3月31日)は収益体制改革の一環として、希望退職者の募集による人件費の削減と51か店の不採算店舗を閉店し、管理コストを改善。また、個店単位でのマネジメントを取り入れはじめ、店舗ごとのメニュー対応や割引券の発行を可能にしたことで、既存店売上高の状況は前年比2.6%減とようやく底から脱してきた。
ここ数年、持ち帰り寿しは回転寿しチェーンに押されていた。「1円」とはいえ、あえて値下げを打ち出すことで消費者に「安さ」をアピール。集客力を高めて、アベノミクス効果を取り込みたいところだ。