最近落ち込み気味な「アベノミクス相場」にあって、なお右肩上がりの値動きが続いている「バイオ銘柄」が「バブル」の様相を呈している。
2013年6月26日には、iPS細胞事業と臓器移植などに係わる臨床検査事業を展開する「リプロセル」が大阪証券取引所ジャスダック市場に上場したが、とうとうこの日は初値が付かなかった。
「売り上げなくても上場できる」?
バイオ銘柄は、iPS細胞を発見した京都大学の山中伸弥教授が2012年10月にノーベル賞を受賞したことをきっかけに一躍脚光を浴びた。年明けに政府が再生医療に多額の予算を計上することが明らかになるとさらに弾みがつき、株価は急上昇。最近ではアベノミクスの「成長戦略」の中核の一つに「医療」が据えられたことで活気づいており、好材料に反応して高値更新を続けている銘柄は少なくない。
これまでのバイオ銘柄は、赤字経営が続いているわりには将来の業績予想も不透明。研究開発費ばかりがかさみ、「このままでは倒産してしまうのではないか」という厳しい状況に立たされていた。
そのため、バイオ銘柄を投資対象として考える個人投資家はあまりいなかったが、創薬や再生医療、免疫細胞療法の技術などさまざまな医療分野を、いわば「国策」として支援していく方針が明らかになったことで、事態は一変。将来の業績に多少の不安があっても、「もしかしたら、ものすごい新薬が開発されるかもしれない」「新薬が開発されたら、企業業績は急上昇して、株価が何十倍、何百倍にまで跳ね上がるかもしれない」という期待が膨らんだわけだ。
バイオ銘柄が「バブル」になりやすい原因は、取引所の株式の新規上場基準にもある。東証マザーズの「事前チェックリスト」には事業計画やガバナンス、監査などとともに「その他」の項目があり、そこには「創薬系バイオビジネス」の上場準備のポイントが示されている。
ある投資ファンドの関係者は、こう説明する。
「たとえば創薬ベンチャーの場合、売り上げが立たなくても上場できます。その場合、臨床試験のフェーズIII(患者対象の臨床試験で、有効性や安全性が確認できること)の段階が終了していて、かつ製薬会社とのアライアンス(事業化の担保)があることが条件です」
これをクリアすれば、上場審査は通過する可能性が高まる。つまり、上場する段階から「期待」だけで値がつくので、バブルが生まれやすい土壌にあるようだ。
そんなこともあってか、「バイオベンチャーはこれまでも多くが上場していますが、成功といえるのは1、2社しかないでしょう」。