自民党と公明党の候補が全員当選するという「完勝」を果たした東京都議選(定数127、2013年6月23日投開票)で、とりわけ躍進ぶりが目立ったのが共産党だ。改選前の議席8議席を17議席に倍増させ、前回の09年の選挙で失った議案提出権を取り戻すという結果に「第3党の地位を得ることができた。大変うれしい思い」(志位和夫委員長)と大喜びだ。
もっとも、この背景については、民主党が批判票の「受け皿」としての役割を失ったため共産党に流れたとの説や、低投票率が組織戦に強い共産党に有利に働いたという説など、さまざまな見方があるようだ。
NHKの当確に合わせて次々に「当選確実!」とツイート
開票が始まる前の段階から共産党は追い風を感じていたのが、ソーシャルメディアの動きも活発だった。機関紙「しんぶん赤旗」のツイッターのアカウントは、18時30分過ぎには、
「投票箱が閉まる20時まで、あと1時間あまり。ぜひ貴重な1票を無駄にせず投票を。棄権せず投票するよう呼びかける活動は、公選法上なんら制限されず、だれでも自由にできます」
とツイート。投票が締め切られた20時以降は、NHKの速報をもとに、共産党の候補者に当確を打つごとに「当選確実!」と次々にツイートした。22時40分には写真付きで
「共産党の都議選開票本部で当確が出るたびに候補者の名前に花を飾っていく」
ともツイート。祝賀ムードがただよった。
「赤旗」、深夜会見を1面肩に載せる
日付が変わった6月24日0時頃には、志位委員長が記者会見を開き、
「都議会で第3党の地位を得ることができた。大変うれしい思い」
「この都議選で行った政治的主張を多いに発展させていくという見地で参院選を戦いたいと思う」
と笑顔をみせた。参院選に向けて弾みを付けたい考えを改めて強調した形だ。
「赤旗」の紙媒体も異例の報道体制だったようだ。実は「赤旗」は、コスト削減の一環として、従来は印刷工場から配達地域への距離を考慮して2版(バージョン)製作していた紙面を、6月から1版に減らしたばかり。そんな逆境でも、23区で販売された紙面では、深夜の志位委員長の会見記事を1面のトップに次ぐ2番目の項目(肩)に写真付きで掲載した。
勝因分析は三者三様
ただ、勝因については、さまざまな見方があるようだ。前出の赤旗ツイッターは、
「都政ではオール与党と対決、知事いいなりでなく都民要求の実現を求め、国政では、国民の所得を増やす政治への転換、原発ゼロ、憲法を生かすことを訴え、理解を得た」
と独自の立ち位置が評価されたと分析している。
他方、朝日新聞の記事では、出口調査の結果について
「批判票を取り込んだのは共産党で、長らく『反自民』の受け皿だった民主党はすっかり影が薄くなっていた」
と解説。自民党の批判票が民主党に流れなくなった結果の共産党の得票だと分析した。読売新聞はさらに違った見方だ。今回の都議選は、投票率は43.50%で前回都議選の54.49%から10.99ポイント下落し、過去2番目の低さだった。このことから、
「今回は低投票率となったことが、根強い支持の党員を有している共産党に有利に働いたとの見方も出ている」
と、公明党や自民党と同様、組織票を手堅くまとめたことが勝利につながったとみている。