米ハリウッド映画界の巨匠、スティーヴン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス両監督が、映画業界のメルトダウンを予言するスピーチをしたと話題だ。
米メディアなどの報道によると、スピルバーグ、ルーカス両監督は、南カリフォルニア大学映画学部の新校舎設立を記念したイベントで、そろってスピーチに立った。
超大作ばかりに頼りすぎていると苦言
スピルバーグ監督はスピーチで、最近の映画業界は、巨額の制作宣伝費をかけた超大作映画ばかりに頼りすぎているといきなり苦言を呈した。そして、2億5000万ドル(約238億円)もかける映画について、「3作か4作、あるいは6作ほどの超大作映画が立て続けにコケて、大きなメルトダウンが起きるはずだ」と明かしたのだ。
将来的には、超大作だけが映画館で上映され、低予算の映画はテレビで見るようになるとした。それとともに映画館のチケットは高騰し、たとえば、3作目が2013年に公開された「アイアンマン」のような大作になれば、次回作は25ドル(約2400円)ほどになってもおかしくないという。
これに対し、12年に公開され、アカデミー賞主演男優賞などを獲った自作「リンカーン」のような作品は、7ドル(約700円)ほどのチケット価格にしかならないと漏らした。そもそも、この作品は、映画ではなく、テレビドラマとして放映される寸前だったそうだ。
最終的には、映画のチケット代は、5~10倍に跳ね上がり、50~100ドル(4800~9500円)ほどになるとも指摘した。
ルーカス監督も、こうした意見に同意し、「スピルバーグとルーカスでさえ、作品を公開してくれる映画館がない」と嘆いた。将来的には、ブロードウェイのミュージカルのように、チケット代が高くなるほか、映画館が巨大化して少数の大作が1年中上映されるようになるとの見方を示した。
ハリウッドで居場所をなくしつつある?
スピルバーグ、ルーカス両監督のスピーチは、日本のメディアでも紹介され、ネット上では、驚きの声が上がった。
好意的な声としては、「これはスピルバーグが言うだけに重い意見だな」「さすがによくわかってるね!」といった書き込みがあった。
一方で、両監督がもはやハリウッドで居場所をなくしつつあるからではないか、とのうがった見方も出た。
報道などによると、スピルバーグ監督は、映画会社との契約トラブルが多くなり、「リンカーン」の制作にも時間がかかったという。2012年には実際、契約にこぎつけずに、映画から降板する事態も報じられている。ルーカス監督も、制作した映画「レッド・テイルズ」をこの年に公開するまで苦労したことが伝えられ、引退をほのめかしたとの報道も出ている。
スピルバーグ監督は「ジュラシック・パーク」「E.T.」、ルーカス監督は「スター・ウォーズ」シリーズといった大作を手がけただけに、自らが映画業界の流れを作ったのではないかとの指摘もネット上では出ていた。
大作映画に頼りすぎの影響かどうかは分からないが、日本でも、ハリウッド映画など洋画の人気は低迷している。キネマ旬報映画総合研究所の2012年5月18日付サイト記事によると、02年に7割強ものシェアがあった洋画は、ここ数年は邦画と半々に落ち込んだ。13年にこれを覆すだけの大ヒット洋画が出るかどうかは未知数だ。