東京の世田谷区と杉並区が国土交通省に対して、単独区で「ご当地ナンバープレート」を申請した。この他にも申請を目指したが断念した特別区が複数あるという。
現在、東京23区内のナンバーは品川・練馬・足立の3つ。インターネット上では後者2つが「不人気なのでは」との見方も出て、さながら23区間の「格付け戦争」の様相を呈している。
「誇り高き杉並区民が田舎臭い練馬ナンバーを強制されるのは屈辱」
「せっかく夢を持って有明に引っ越したのに、足立ナンバーはどうしても嫌です。引越す前から分かってはいましたが、現実問題としてどうしても納得いきません。地方(品川・横浜ナンバー以外)から来る人はさほど抵抗がないと思いますが、足立ナンバーがネックになり居住を諦めた人は結構いますよ」
江東区ホームページ「いただいたご意見と回答」コーナーにはこんな意見が寄せられていた。同区は今回こそ申請に至らなかったが、隣接区を巻き込んだ「東京港湾ナンバー」(仮)の構想を温めている。
自動車のナンバーは国土交通省が管轄していて、自動車の本拠の位置する運輸支局の名称等にもとづく。そのため、品川区、世田谷区他6区は品川の、練馬区・新宿区・杉並区他6区は練馬の、足立区、江東区他5区は足立のナンバープレートをつける。
このうち品川ナンバーは群を抜いて人気とされ、Google検索のサジェストに「品川ナンバーにしたい」と出るほどだ。他方、足立ナンバーは「嫌」、練馬ナンバーは「ださい」と評判が芳しくない。
要するに先の質問は、足立ナンバーが嫌なのでご当地ナンバーを作って欲しいということらしい。
杉並区民の「練馬ナンバー」に対する感情も似たようなもので、杉並区が申請にあたりおこなったアンケート結果には、
「杉並区民の多くが練馬ナンバーは不本意だと思っているはず」
「誇り高き杉並区民が自家用車に田舎臭い練馬ナンバーを強制されるのは屈辱だと言う冗談もある」
とのコメントが並ぶ。杉並区の担当者は、変えたい理由を「杉並への愛着のほうが大きい」とした上で、「どうしても練馬がいいという方はほとんどいらっしゃらないというか、そうそういないんじゃないかと…」と話した。
もちろん、自分の住んでる区以外のナンバーをつけざるを得ない区の住民らが、少なからず違和感を覚えるのは当然だ。
「新宿にも『どうして練馬なの?』という意見はありますよ。『どうして新宿じゃないの?』という素朴な疑問です」――今回、「登録台数10万台以上」の要件を満たせず申請を断念した新宿区の担当者も、J-CASTニュースに対してこう明かす。「新宿」は区の名前としてだけではなく、都市として知名度が世界的にも高いので、ナンバーにならないのは残念との意見が寄せられているそうだ。
導入後「世田谷か品川か」「杉並か練馬か」の選択できず
ただ、23区中でもっとも熱心に「ご当地ナンバー」に取り組んできた世田谷区は、もともと人気の高い品川ナンバーのためか、アンケート調査でも「品川ナンバー」自体に対する違和感は少ない印象を受ける。
むしろ、調査に寄せられた反対派の意見には「ダサイ。田舎という感。みっともない」「品川で十分です。逆に恥ずかしい」と冷めたものも複数あり、区議らによる反対活動も展開されている。一方、賛成派は「区民としての高揚感、誇り」「世田谷区民としての自覚と責任」「子孫にも有意義」「旅行先で世田谷ナンバーを見つけたら嬉しい」と独自の期待に胸を膨らませていた。
ご当地ナンバーは、区としての一体感や、地域振興、郷土愛につながるとして、国土交通省が第2期の募集を6月末までおこなっている。世田谷・杉並ナンバーは申請が通れば、早くて2014年には導入される見通しだ。
導入後は、「世田谷か品川か」「杉並か練馬か」といった選択はできない。導入前に購入した車の品川、練馬ナンバープレートは引き続き使用できるが、希望する場合はナンバープレート代を負担することで、一部の場合を除き、世田谷、杉並ナンバーに変更できるという。