橋下徹共同代表(大阪市長)の、いわゆる従軍慰安婦をめぐる発言をきっかけに日本維新の会は支持率低下が続いている。
橋下氏は参院選の前哨戦とも言える東京都議会選(2013年6月23日投開票)で敗北した場合、代表を引責辞任する考えを明らかにしていたが、その「勝敗ライン」が明らかになった。現有勢力を割り込んだ場合は「敗北」とみなすようだが、新聞の情勢調査を見る限りでは、このラインを守れるかどうかもあやしい状況だ。
12年冬「追い風ムード」のまま34人も擁立
都議選では、全127議席を42選挙区の候補者253人で争う。維新の現有勢力は3議席だが、松井一郎幹事長(大阪府知事)は6月20日、記者団から勝敗ラインについて聞かれて、
「現状維持だけでは勝ったとは絶対言えない。下回れば、はっきり敗退だ」
と述べ、2議席しか獲得できなかった場合は、進退に影響する「敗北」だとの認識を示した。
維新は公認候補を34人も擁立している。「31人が落選しても3議席を守れれば敗北ではない」と強弁することも可能で、進退をめぐるハードルにしては低すぎるとの指摘も出そうだ。
この34という数は、12年12月の衆院選の結果を見て決めたものだ。維新は比例東京ブロックで129万8309票を獲得し、石原慎太郎共同代表ら3人を当選させている。これは自民党(162万6057票、5議席)に次ぐ数で、民主党(100万8011票、3議席)を大きく上回っている。
本来ならば橋下氏の発言で支持率が低下したことを受けて候補者も絞り込んで「選択と集中」で臨むべきだったとみられるが、候補者数を見る限りでは12年冬の「追い風ムード」のままで都議選に突入した形だ。
橋下氏は6月20日、
「戦況を苦しくしてしまった点は申し訳ない」
といった内容のメールを党国会議員団や東京都議選、参院選の候補者ら送っている。「戦況が苦しい」という点は間違いなさそうで、勝敗ラインの3議席すらおぼつかない状況だ。
当選圏内だと読める維新候補者は皆無?
読売新聞は2013年6月19日から21日にかけて、選挙区ごとの情勢調査を掲載している。一般に新聞の情勢調査記事に登場する候補者は、登場する順に当選確率が高いと記事を書く側が分析しているとされる。この慣例に従うと、維新の候補者で当選圏内に入っていると読める人は皆無だ。
比較的知名度がある維新の候補者でさえも苦戦しているようだ。日野市(定数2)の、タレント候補として有名な佐々木理江候補(30)は、記事の最後に、
「維新・佐々木は、日野、小金井、国分寺の3市が進める可燃ごみ共同処理計画反対などを訴える」
とある程度。南多摩(定数2、多摩・稲城)の石川良一候補(61)は稲城市長を務めたこともあり知名度は抜群だが、記事では
「自民・現職がやや優位に戦いを進め、民主・現職と、維新、共産の新人が追う展開」
という表現。やや劣勢に読める。
松井氏の発言を素直に受け止めれば橋下氏引責辞任が現実味を帯びてくるが、党内では「参院選に向けて橋下・石原の二枚看板が必要」だとの声も根強い。
「軽々に辞任されるのは困る」(片山虎之助政調会長)
という声もあり、情勢は流動的だ。
☆2013年夏の参院選の投開票日は、およそ1か月後に迫った。争点が明らかにならず、このままだと自民党の「一人勝ち」に終わる可能性が強い。野党は何もできないまま終わるのか。それとも反転攻勢に打って出ることができるのか。このシリーズは野党の動向に焦点を当て、随時掲載する。☆