試作品分野で威力を発揮
ただ、こうした「個別」の製作はいいとしても、コストは高くつき、効率も悪く、鋳物の鋳造装置や金型などでのように大量生産はできない。家庭用プリンターで年賀状くらいを作るには便利で、相手により文章を手直しするのも可能で重宝するが、何万枚といったダイレクトメールは印刷工場の大型機械で刷らないと高くつくのと同じだ。量がまとまったときの単価で、従来の生産技術にまだまだ太刀打ちできず、3Dプリンターで直接大量生産するのは、まだかなり先の夢だ。
耐久性も問題で、高性能機もあるとはいえ、薄い紙を重ねるようなものなので、「一般に、縦の力には強いが、横の方向には弱い」(装置を使っているメーカー関係者)。
そこで、3Dが威力を発揮してきたのが試作品分野。製品開発段階では、何通りも部品を作って、問題があれば手直しし、作り直すという繰り返し。これが3Dプリンターなら効率よくでき、開発時間を短縮できる。
その延長上で注目されるのは、鋳型や金型を3Dプリンターで作ること。金型などは複雑で丁寧な切削加工が必要だが、3Dプリンターで工程を大幅に短縮できる。例えば、パナソニックは通常、1か月程度かけて作っていた家電製品の部品などの金型を、3Dプリンターを使って半分の時間でできるようにする方針という。この金型などを使って、大量生産すれば全体に生産コストを抑えられる。