打倒「白戸家」――そんな意気込みで始まったはずのNTTドコモの新CM「ドコモ田家」シリーズだが、このほど行われた株主総会で「白い犬の方が面白い」とダメ出しを食らうなど、今ひとつふるわない。
2013年1月、ドコモはこれまで7年にわたって活躍してきたCMキャラ「ドコモダケ」を刷新、高橋克実さんらが出演する「ドコモ田家」シリーズを開始した。キノコ型のキャラだった「ドコモダケ」一家が人間化したという設定で、登場人物が全員キノコ帽子をかぶっているのが特徴だ。
人間化の新シリーズは「白戸家」と比べられ…
「おすすめなんだな、これ」
「おすすめパック」
昼下がりの家庭、優雅なクラシックをバックに、キノコ帽子をかぶった3人の女性が顔にパックをつけ、楽しげに語り合っている。
「きれいになるかしら」
「そっちじゃなくて、(スマートフォンを取り出して)こっちのパック」
うっとりつぶやく「バーバドコモダケ」(藤村志保さん)に、橋本愛さん演じる「ムスメドコモダケ」がすかさずツッコミを入れる。化粧品のパックと、スマホの料金プランの「パック」を引っ掛けたのどかなギャグで、全体的におっとりとしたムードが漂う。
風変わりな家族モノということで、ソフトバンクの「白戸家」と比較されることも多いが、意表を突いた登場人物が多い白戸家に対し、こちらはキノコ帽子のほかは、あくまでほのぼのしたムードを強調している。13年2月度の銘柄別CM好感度ランキングでも、ドコモは2位にランクインした(CM総合研究所調べ)。発表会で担当者から「イヌがしゃべっているしキノコがしゃべってもいいのでは」との言葉が出たように、CM好感度トップを6年連続で守るソフトバンクへの対抗心がにじむCMといえる。
株主総会では「白い犬は面白いが…」
ところがドコモ懸命の努力にもかかわらず、6月18日開催の株主総会では株主からこんな質問が。
「コマーシャルをたまに見ると、白い犬は面白い。ドコモはもう少し楽しくならないのか。ドコモダケもキャラクターを変えるべきでは」(スマホジャーナリスト・石川温さんのツイートより)
坪内和人副社長は「白い犬に食われているが、精一杯がんばっている。ドコモダケが人になったのも賛否あったが、ご理解いただきたい」(同)と釈明したものの、株主の目には「ドコモ田家」では力不足と映っているようだ。
実際に上記のランキングでも、1位をひた走るのはソフトバンクで、3月以降もドコモはその差を詰めるどころか、KDDIにも抜かれ、順位をじりじり下げている。
「ドコモもかなり焦っている」
2013年3月期決算で、ドコモは6年ぶりの営業減益、そして年間累計のMNP(番号持ち運び制度)で過去最大の140万9500件の転出超過となるなど、「一人負け」とも評される厳しい結果となった。起死回生の「ツートップ戦略」を打ち出してからも、月間純増数(5月)はソフトバンク、KDDIの後塵を拝している。
ITジャーナリストの三上洋さんはその現状を、こう解説する。
「ツートップというが、ユーザーの側から見れば実際の選択肢は『iPhoneかAndroidか』。そのiPhoneがないことは当然大きな機会損失で、株主にもいらだちが募っているのは間違いない。今回の株主総会では『iPhoneは出さないのか』という質問が、もはや出ることさえなかった。ドコモもさすがに焦っているようで、2013年に入って、さまざまなキャンペーンなどを通じて端末の割引を進めていますが……」
ドコモ田家の運命やいかに。