避難者への”いらだち”? マスコミ報道に違和感【福島・いわき発】

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   私の携帯ストラップは、富岡町から避難している94歳のおばあさん手づくりの「ちりめんふくろう」(=写真)。1年がたって、新しくいただいたものに替えた。


   イトーヨーカドー平店2階に、被災者のための交流スペース「ぶらっと」がある。1年前、ここでおばあさんと出会い、ストラップをいただいた。


   富岡町にいたころ、おばあさんはストラップをつくってはみんなに配って喜ばれていた。娘さんがたまたま「ぶらっと」(いわき駅前再開発ビル「ラトブ」のとき)を訪ね、母親の「ちりめんふくろう」を飾ってもらうと、欲しい人が続出した。借り上げ住宅に住み、話し相手もいない日々、再び張り合いが生まれた。


   「ふくろうは一つひとつ違うの」「(ふくろうを)つくっていると肩がこらないの」「つくってプレゼントするのが楽しみ」。1年前のことばがよみがえる。


   4月26日にNHK「おはよう日本」で「避難者への"いらだち"なぜ」が放送され、5月24日には毎日新聞が見開き2ページで「検証・大震災 福島・いわき市の現状 共生遮る誤解の連鎖」を報じた。


   そうかもしれない。が、しかし――「融和」「支援」に努めているNPOや市民はいる。「いらだち」「あつれき」「誤解の連鎖」だけでなく、そちらにももっと光をあててほしかった、という思いが残る。


   私の体験でいうのだが、双葉郡から近所の借り上げ住宅に避難してきた人々に、いらだちや反発を感じたことはない。それどころか、彼らの胸の内を占領しつつある断念・失意を思うと、つらくなる。ごみ出しだってルール通りになってきた。


   一人ひとりと向き合えば、おのずと違った感情がわいてくるのではないだろうか。「ちりめんふくろう」は、その意味では私にとって共生のシンボルだ。

(タカじい)



タカじい
「出身は阿武隈高地、入身はいわき市」と思い定めているジャーナリスト。 ケツメイシの「ドライブ」と焼酎の「田苑」を愛し、江戸時代後期の俳諧研究と地ネギ(三春ネギ)のルーツ調べが趣味の団塊男です。週末には夏井川渓谷で家庭菜園と山菜・キノコ採りを楽しんでいます。
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