口火を切ったのは韓国監督「イランにひどい待遇受けた」
韓国側にも言い分はあるようだ。実は試合終了直後、イランチームの監督が韓国ベンチに向かって腕を掲げ、挑発するかのようなポーズをとっていたようなのだ。そして、これ見よがしの「ウイニングラン」で勝利を誇示し続けた。対戦相手に敬意を払わないのはスポーツマン精神とは言えず、あまりほめられた行為ではない。とはいえ、これに「暴力」で応戦したところで許されるはずはない。
両国は対戦前からピリピリしていた。口火を切ったのは韓国の崔康煕監督。2012年10月にイランのホームで行われた試合で「ひどい待遇を受けた」と発言したのだ。入国手続きが遅れ、現地での練習場の環境も劣悪だったと憤る。韓国の主要紙「中央日報」電子版(日本語)も6月14日付で大きく報じ、韓国メディアも「いやがらせ」を受けた、イラン代表の選手のマナーも良くなかったと崔監督を「援護射撃」した。
これに対してイランのケイロス監督は激怒。不当な扱いなどしていないと否定し、「崔監督は恥知らず。イランへの敬意を欠いている」と非難した。以後はお互いがなじり合う展開となり、果ては「イランに血の涙を流させてやる」「復讐はサッカーで。血には汗でこたえる」とエスカレートしていった。
石井氏は「この両チームなら、何かが起こるかもしれないとの予感はありました」と話す。韓国はラフなプレーが見られることがあり、イランも中東サッカー独特の狡猾さが随所に現れる。W杯の出場権がかかっていたうえ、お互いが敵意むき出してぶつかり合った。韓国とすれば、プライドをかけて必勝を期した地元での決戦に敗れ、イランに好き放題にふるまわれた末にフラストレーションが爆発し、最後は「憎き相手」に思わず手を出したということか。「ナショナリズムが、国際感覚とは違った方向であらわになったのかもしれません。(精神的に)未成熟な代表チームがいまだに存在している、ということでしょう」と石井氏は苦笑する。