「座ってるだけ 80才以上」…。京都のしば漬け店が店先に掲げているアルバイト募集の労働条件がすごい、と話題だ。
比叡山への西の入口となっている京都市左京区の八瀬比叡山口駅前に、名物のしば漬けを売る店「又寅(またとら)」がある。その店先に掲げられているのが、風変わりなアルバイト募集の張り紙だ。
昼寝付で、時給が1000円以上
それを見た大阪府在住の主婦が、ツイッターで2013年6月16日に「破格の労働条件で驚愕した…!」とつぶやいた。
アップされた写真には、前述した労働条件のほかに、「元気のない方 昼寝付」などと書かれている。それで、時給が1000円以上というのだ。主婦は、「オレがあと40才ちょい歳をとっていたら…!」とうらやましがった。
このツイートは、ネット上で反響を呼び、5000以上もリツイートされた。主婦同様に、羨望を込めて「来年度やばそうなんで、年齢サバ読んで応募したい」「元気のなさには自信があるのに年齢の壁が…(つД`)」といったため息も漏れていた。
実は、この店は、テレビの旅番組などで何度か取り上げられている。テレ朝系では、12年1月18日放送の「ナニコレ珍百景」でも、「楽すぎるアルバイト」として同様な労働条件が紹介された。同じ番組で13年1月5日に再紹介されたほか、日テレ系で12年9月22日放送の「ぶらり途中下車の旅」でも話題にされている。
主婦もそのことは知っていたと明かしたうえで、「どんな仕事内容なのかすんごい気になります…!」とツイートした。時間が経ってもまだアルバイト募集の張り紙があったことが気になったらしく、「年齢のハードルすこし下げたほうがいいんじゃあ…おじいちゃんじゃダメなんだし…」と心配していた。
又寅の田辺孝之店主は、取材に対し、張り紙のような労働条件にしていることについて次のように説明した。
民族衣装を着てもらい看板娘に
「いわゆる看板娘として、かすりの着物を着て、頭に手ぬぐいを被る大原女(おはらめ)姿になってもらいます。お年寄りが民族衣装を着た方が、受けがよろしいので、若い人では意味がありません。全国から集まる観光地になりますので、電車を降りたときに、心が安らぐようにと考えました」
大原女は、しば漬けの発祥地とされる京都・大原で、昭和初期ごろまで薪などを頭に載せて行商をしていた女性を指す。
「元気のない方」としたことについては、田辺孝之店主はこう説明する。
「商売はしなくていいので、べらべらとしゃべるんと違いますからね。『どっから来よったんか』と言ってもらえるだけでいいんですよ」
昼寝付も本当だと言う。「疲れが取れるまで、1時間でも2時間でもいい。お年寄りは、寝ているのも絵になります」
このほか、送り迎えができるように近所の人がいいとした。
アルバイト募集には、応募があるものの、70歳や75歳の人が来るという。「今の人は若く見えるので、芸者のようになって、ちょっと具合が悪い。ほんまのお年寄りがほしいんですよ」
これまでは、母親の玉子さんが看板娘をしていたが、2013年4月25日に89歳で亡くなってしまった。今はアルバイトがいないため、店先で看板娘の映像を流しているほか、マネキン人形を1体から3体に増やして代わりにしている。
実際のアルバイトは、「楽すぎる」ものではなく、座っているだけで大変で体力も消耗するそうだ。忍耐力のない若い人では、なかなか難しいかもしれない。
「マネキンも、それはそれで受けますよ。お年寄りが来ないなら、その方が笑いを取れていいと思っています」