民族衣装を着てもらい看板娘に
「いわゆる看板娘として、かすりの着物を着て、頭に手ぬぐいを被る大原女(おはらめ)姿になってもらいます。お年寄りが民族衣装を着た方が、受けがよろしいので、若い人では意味がありません。全国から集まる観光地になりますので、電車を降りたときに、心が安らぐようにと考えました」
大原女は、しば漬けの発祥地とされる京都・大原で、昭和初期ごろまで薪などを頭に載せて行商をしていた女性を指す。
「元気のない方」としたことについては、田辺孝之店主はこう説明する。
「商売はしなくていいので、べらべらとしゃべるんと違いますからね。『どっから来よったんか』と言ってもらえるだけでいいんですよ」
昼寝付も本当だと言う。「疲れが取れるまで、1時間でも2時間でもいい。お年寄りは、寝ているのも絵になります」
このほか、送り迎えができるように近所の人がいいとした。
アルバイト募集には、応募があるものの、70歳や75歳の人が来るという。「今の人は若く見えるので、芸者のようになって、ちょっと具合が悪い。ほんまのお年寄りがほしいんですよ」
これまでは、母親の玉子さんが看板娘をしていたが、2013年4月25日に89歳で亡くなってしまった。今はアルバイトがいないため、店先で看板娘の映像を流しているほか、マネキン人形を1体から3体に増やして代わりにしている。
実際のアルバイトは、「楽すぎる」ものではなく、座っているだけで大変で体力も消耗するそうだ。忍耐力のない若い人では、なかなか難しいかもしれない。
「マネキンも、それはそれで受けますよ。お年寄りが来ないなら、その方が笑いを取れていいと思っています」