アベノミクスの影響で景気回復の兆しが見えてきた日本経済の、重しになっているのが970兆円にも膨らんだ国債などの借金。国はそれを返済していかなければならない。
そうしたなか、麻生太郎副総理兼財務・金融相が「日本は自国通貨で国債を発行している。(お札=日銀券を)刷って返せばいい。簡単だろ」と、財政法で禁じられている「財政ファイナンス」を容認したかのような発言をした。
財政ファイナンスは「禁じ手」
麻生財務・金融相の発言は、2013年6月17日に横浜市内で行った講演でのこと。時事通信によると、発言は財政法が禁じている「財政ファイナンス」を連想させ、会場からはどよめきの声が上がったという。
ただ、麻生氏は「お金を出し過ぎて信用がなくなったら金利は上がる」とも指摘。際限のない通貨発行には否定的であることも強調し、そのうえで日本の借金は970兆円に膨らんでいるものの、金利は上がっていない。「日本が財政破たんの危機ということはない」と言いきった。
「財政ファイナンス」とは、国債のマネタリゼーション(貨幣化)とも呼ばれ、中央銀行が政府に対して資金を調達することをいう。政府の財政赤字に対して、日銀が国債を直接引き受けることで資金を融通する。
しかし、財政法はこれを禁じている。日銀がいったん国債の引き受けなどで政府への直接の資金供与をはじめてしまうと、政府の財政規律を失い、通貨の増発に歯止めが効かなくなり、将来的に「ハイパーインフレ」を招く恐れが高まるからだ。
とはいえ、みずほ総合研究所のチーフエコノミストの高田創氏が、「過去10年余りの日銀の金融政策は、そもそもマネーフローでは財政ファイナンスと為替誘導にあり、4月以降の黒田日銀の『異次元の金融緩和』は、為替誘導と財政ファイナンスの度合いを一層強めている」と指摘するように、すでに日銀による「財政ファイナンス」が行われているとの見方は少なくない。
日銀の黒田東彦総裁は5月の参院予算委員会で、「異次元の金融緩和」における長期国債の大量買い入れについて民主党の川上義博議員の質問に、「財政ファイナンスとは明確に一線を画すもの」と強調。「(買い入れは)あくまでも金融政策の目的のために、日銀自身の判断で行うもの」と説明している。