ソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン(スマホ)「エクスペリアZ」が、2013年2月の発売から4か月で生産が終了した。ユーザーからの評価は高く、売れ行き好調な中での事態だ。
専門家は「人気があるのに、なぜこの時期に」と首をひねる。商品のライフサイクルが短い国産スマホの「特殊事情」もありそうだ。
複数メーカーと取引があり「ソニーだけ優遇できない」
エクスペリアZはNTTドコモが販売している。「ガラスの1枚板のような薄型フラット」な形状が特徴で、5インチのディスプレーはフルハイビジョン画質を楽しめる。調査会社BCNによると、発売した2013年2月から2か月連続でスマートフォンのランキング1位を記録した。以後もトップテンを維持しており、ドコモの春モデルの中では優等生と言えよう。
ところが、売れ行き好調だったエクスペリアZの国内向け生産が終了したという。ドコモに電話取材すると、その事実を認めた。ソニーへの追加発注の可能性を問うと、「現段階では何も決まっていません」との回答だった。一方のソニーモバイルも「ドコモ向けの納品は完了しました」と話した。
「人気商品が、どうして」と不思議がるのはBCNのアナリスト、森英二氏。ドコモからは5月17日、新製品の「エクスペリアA」が発売されているため、代わりに1世代前の「Z」の生産がストップしたとも考えられる。だが森氏はJ-CASTニュースの取材に、「『Z』の高級感を『A』が必ずしも受け継いでいるとは、個人的には思えません」と指摘。純粋な後継機種というよりは、同じブランドでもふたつは別種のモデルという見方を示した。
青森公立大学経営経済学部准教授の木暮祐一氏は、ドコモがエクスペリアAを「ツートップ」の一角として、スマホ販売の中核商品に据えた戦略が影響しているのではと考える。たとえ「Z」の人気がいまだに衰えていないとしても、「旧モデル」に相当する製品を「ツートップ」と同様にプッシュするのは無理があるからだ。それに「複数の国内メーカーと取引があり、端末が納入されている点を考慮すると、ソニー1社だけを優遇してエクスペリアを何種類もアピールするわけにもいかないでしょう」。
国産スマホのロングセラーは非常に珍しい
ただし今回のように、比較的短期間で生産を終了するのは、スマホに関してはそれほど珍しくはないようだ。
木暮氏によると携帯キャリアは春や夏、年末と商戦ごとに頻繁に新製品を投入し、バランスを取りながら新旧の端末を入れ替えていくという。そのため、国内メーカー産のスマホのロングセラーは非常に珍しく、「1、2年にわたって売れ続ける端末は、まずありません」という。
キャリア側はコストを少しでも下げるため、メーカーに対してはひとつのモデルを一括生産で注文し、まとめて買い上げる。以後、追加発注はかけないのが一般的だそうだ。「過去にも、発売から短期間で売り切れて再生産の要望が高かった端末はありました。でもそれらは結局、惜しまれながら生産終了となっています」(木暮氏)。
新たに生産されないとなれば、在庫を探し出すか中古品を手に入れるしかない。商品比較サイト「価格.com」には、エクスペリアZの在庫を探しているとの書き込みや、逆に「この店舗に在庫ありました」との情報提供が見られる。複数の小売サイトでは中古品を取り扱っているが、「多少のキズあり」「包装箱なし」でも4万円台後半、たいていは5万円を超えており価格は「高止まり」したままだ。