年度内に必要な省令改正を実施したい考え
有識者会議では、(1)について積み立て不足を複数年度に分割して積み立てられるようにする、(2)に関しては廃炉作業時も稼働する冷却設備など一部の資産を「廃炉に必要な資産」として価値を認め、減価償却を続けられるようにする――などの案を軸に検討すると見られる。経産省は有識者会議の報告書を受け、年度内に必要な省令改正を実施したい考えだ。
確かに、経産省の思惑通り進めば、「損失の一括計上リスクが無くなり、各社は廃炉の是非を判断しやすくなる」(エコノミスト)のは疑いない。だが、収益を生まない設備は企業にとって価値はないのだから損失処理するというのが会計の原則であり、会計士ら専門家は、電力業界にだけ例外を認めることに懐疑的だ。
ただ、電力会社にすれば、もともと決まっていたルール(40年積み立て)に従ってやってきて、急にルールが替えられたようなもので、「土俵が途中で変えられるのだから、例外的な対応は当然」(電力業界筋)という理屈になる。
より根本的には、廃炉費用の負担をどうしていくのか、という問題がある。会計処理の話は、どのように費用や損失を多年度にならし、単年度の負担を分散するかという、ある意味でテクニカルな話。廃炉費用の金額そのものが、会計処理で変わるわけではない。これを一度に特別損失で処理したら電気料金に反映されないが、翌年度以降も費用として処理していく場合は料金に上乗せされ、その場合、廃炉費用を計上する期間の長短で、料金の上乗せ幅が変わってくるという具合に、消費者に影響してくる。廃炉しない原発の再稼働の行方も、電力会社の収益に直結し、廃炉費用を負担する財務力を左右する。そもそも、国が廃炉に責任を持つべきだとして、税金の投入を求める声も電力業界にある。
廃炉費用を何年間かにならしつつ、原発再稼働で火力発電依存を減らして電力会社の収益を改善し、税金投入は極力回避する、というのが経産省が描くシナリオだが、原発再稼働を含め、想定通りに事が運ぶかは未知数だ。