米国産シェールガスの輸入 日本経済の「救世主」なのか

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   日本が熱望していた米国産の安価なシェールガスの輸入が解禁され、原発停止に伴う液化天然ガス(LNG)や石油の輸入増に苦しむ日本経済の「救世主」と言わんばかりの声が沸き起こっている。ただ、実際に日本に入ってくるのは4年後で、価格もどこまで下がるかは予断を許さない。

   シェールガスは、頁岩(けつがん=シェール)層という岩盤の中に封じ込められている天然ガスで、安く掘り出す技術が開発されたことから、2005、06年ごろから北米で産出量が急増し、米国のガス価格は急落。日本が輸入しているLNG価格は現在、100万BTU(英国熱量 単位)当たり17ドルほどだが、米国内の価格は3.5ドル程度と約4分の1の水準とされ、液化し、輸送するコスト(約6ドル)を加えても相当安い。

LNGの輸出先はFTAを結んでいる国に限定

   米政府は国内資源保護のため、LNGの輸出先は原則として自由貿易協定(FTA)を結んでいる国に限定し、その他の国への輸出は米エネルギー省の個別の審査が必要だ。今回は米フリーポート社(テキサス州)が申請していた対日輸出を2013年5月17日に許可した。計画では、2017年にも、中部電力、大阪ガスへの供給を開始する。今回の許可の背景には、雇用促進や貿易赤字減少など米経済の利益にもなるとの判断がある。

   「LNGの安定確保と価格引き下げの両立にきわめて有意義だ」――今回の決定を 受けて安倍晋三首相は茂木敏充経済産業相にこう語ったという。

   日本は原発停止で発電量の9割を火力に頼っており、LNGの輸入量は2010年の7000万トンから2012年に8700万トンに急膨張。今年度の燃料費は円安も加わって震災前から1.5兆円増える 見通し。このため、電力会社は相次いで電気料金値上げに踏み切っている。

LNG価格は2020年に最大15%安くなるとの試算も

   それだけに、安い米国産シェールガスを買えるのが朗報なのは間違いない。震災後、原発停止に伴い緊急に手当てしたこともあり、現在は高値でLNGを買っているが、シェールガスの生産拡大でガスをめぐる競争が激しくなれば、「実際に米国産が入ってくる4年後を待たず、現在輸入している中東、ロシアとも価格交渉を有利に進められる」(経産省)と踏む。今回の米国の許可分は日本の年間LNG輸入量全体の5%(年440万トン)に 過ぎないが、審査中のコーブポイント(メリーランド州、年230万トン)、キャメロン(ルイジアナ州、年800万トン)の2計画も認め られれば合計で最大20%分程度を米産シェールガスで賄えるとされる。これにより、LNG価格は2020年に最大15%安くなる (日本政策投資銀行)との試算もある。

   だが、安価なシェールガスの恩恵を受ける米製造業には輸出拡大への反対論が少なくない。エネルギー省が今後許可を出すハードルは高くなる懸念は強く、審査中の2件がスンナリ認められる保証はない。

採掘に大量の水が必要なのもネック

   米国の市況も、今後、何年にもわたって安定している保証はない。特に、シェールガス革命による製造業の米国内回帰やガス火力発電の増加による需要の 拡大が見込まれ、「LNG調達価格が一概に下がるとは思っていない」(エネルギー業界幹部)と冷静に受け止める向きもある。

   技術面での心配もある。米エネルギー省によると、採掘可能なシェールガス埋蔵量は、世界の年間ガス需要の約60年分というが、生産コストが高く現実に掘れないものもあり、業界では実際には3分の1程度しか掘れないとの見方がある。特にネックが水。効率良く掘れる「水圧破砕法」には大量の水が必要で、ガスがあっても掘れないことになるというわけだ。

   薬品を含んだ水により環境が汚染される問題もあり、フランスやブルガリアでは水圧破砕法を禁止。ドイツでは大半の業者が地下水を利用しているビール醸造業者団体が水圧破砕法での採掘に反対する騒ぎになっているように、今後、世界中で環境との折り合いをどうつけるかが問題になる可能性がある。

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