女子高生(Joshi Kosei)、略して「JK」。ネットの片隅で使われていたこの隠語が、いつしか当たり前に使われるようになっている。
たとえば産経新聞ウェブ版には2013年5月25日、こんな見出しが躍った。
「北の警戒最中に…『ホテルと屋外』でJK2人に淫行 自衛官"暴発"秋田」
ギャル雑誌などでも「JK特集」当たり前
記事は、20歳の男性自衛官が2013年5月、女子高生2人との淫行容疑で逮捕された事件を報じたものだ。本文中には「JK」という言葉は1度も出てこないにも関わらず、見出しでは女子高生という意味で「JK」が使われている。
4月には、読売新聞がウェブ版で「JKに裸画像送信させた2等海尉…LINE端緒」という記事を公開し、一部で話題になったことがある。いずれも掲載されたのはウェブのみだが、少なくとも両紙にとって「JK=女子高生」は、説明不要な「常識」ということらしい。
元々この「JK」は2ちゃんねるなどで使われていたネットスラングだが、07年ごろから「KY語」ブームに乗る格好で、当の女子高生世代に浸透した。現在でも、たとえば女子高生向け雑誌「egg」(大洋図書)の最新号を見ると、
「JK1週間ヘアアレンジ&1週間制服コーデ、発表!」
「eggデビューから4カ月未満!気になるJK3人のこともっと教えて~!」
といった特集が目に留まる。ツイッターなどのプロフィールなどでも、「××(地名)のJKでーす♪」「last JK(高校3年生の意)」といった自己紹介が当たり前のように並んでおり、すっかり定着している。
もっとも比較的以前からネットを利用している人には、こうした「JK」定着の流れに微妙な居心地の悪さを感じている人も多い。
かつては「援交」用語だった
というのもJKという言葉が元々「援助交際」や「出会い系」界隈で使われていた言葉だからだ。当時のアダルト系掲示板などを見ると、こんなやりとりが確認できる。
「××のテレクラってJKとか よくかけてくるんですか」(2001年)
「JKとエンコ(援助交際)するにはどうすればいいでつか?」(2003年)
こうした「危ない」話題は露見を避けるため、わかりにくい隠語を使うのが当たり前だったが、「JK」もそのひとつというわけだ。そのため使用例が広まってからもどこか「いかがわしい」印象があり、違和感を覚える人も少なくない。
ITジャーナリストの井上トシユキさんは、そうした「違和感」を以下のように読み解く。
「『不倫』や『略奪婚』という言葉がテレビや雑誌でおおっぴらに語られるようになってから、言葉だけでなく行為そのものもある意味軽くなりましたよね。ネットスラングが一般的になることへの違和感も、言葉が認められることで、指す対象、それこそJKならば援助交際みたいなところまで容認されるように感じられるからじゃないでしょうか」
ネットスラングから一般化した言葉としては、ほかにも「ブラック企業」などがあるが、これも「かえって当のブラック企業そのものが開き直り、市民権を得た部分もある」。スマホの普及などもあってネットと現実の言葉の垣根は低くなりつつあるが、「もうちょっと使う言葉には慎重であっていいのでは」というのが井上さんの考えだ。